ガザ復興交渉の中でハマスが武器引き渡し提案　鍵はイスラエル軍の撤退

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2025.12.07

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イスラム組織ハマスが、ガザ地区を将来統治するパレスチナ当局に武器を引き渡す用意があると表明した。条件は、イスラエル軍による占領の終結だ。ガザでは停戦と復興をめぐる交渉が続き、国連も「和平合意を戦争終結への転機にすべきだ」と呼びかけている。武装勢力の一角を占めてきたハマスが口にした「条件付きの武装放棄」は、住民の日常とガザ統治の行方にどんな変化をもたらしうるのだろうか。

ガザの住民から見た「武装解除条件」の重み

今回の発言は、長く戦闘と封鎖にさらされてきたガザの人びとにとって、「占領の終わり」と「武装解除」という二つの言葉を同時にもたらした。イスラエル軍の駐留や越境攻撃が続くかぎり、住民は再び大規模な暴力に巻き込まれる不安を拭いきれない。一方で、停戦発効後も人道支援や移動の制限が残る状況が続き、国連は「かろうじて希望をつなぐ fragile な段階」だと表現している。

ガザの街では、イスラエル軍の展開とハマスなどの武装組織の存在が、長年「二重の軍事空間」を形づくってきた。人びとが望むのは、いずれの武装勢力にも怯えず、通常の警察や行政サービスに頼れる生活だ。その意味で、「占領が完全に終わるならば武器を国家の管理下に移す」というメッセージは、治安の主役を正規の国家機関へ段階的に移していく構想として受け取ることもできる。

ただし、住民の受け止めは一様ではない。イスラエルの攻撃にさらされてきた経験から、ハマスの武装を抑止力とみる声がある一方、度重なる戦闘が生活基盤を破壊してきた現実への疲弊も深い。ハマス側は「武器は占領と攻撃の存在に結びついている」と強調し、占領が終われば将来のパレスチナ国家の権限に委ねる考えを示したが、これが実際に暴力の連鎖を断つ一歩になるのか、それとも政治交渉上の駆け引きにとどまるのかは、住民にとって切実な問いである。

ハマスが描く「パレスチナ国家」と武器の行き先

武装放棄に条件を付したのは、ハマスの主任交渉者でありガザ地区の指導者でもあるハリル・アル・ハイヤ氏だ。彼は声明で、イスラエル軍の占領が完全に終結した後には、ハマスの武器を「国家」の権限に移すと述べた。ハイヤ氏の事務所は各紙の取材に対し、この「国家」とは主権を持つ独立したパレスチナ国家を指すと説明している。ガザを統治するパレスチナ当局に武器を引き渡すという構図は、武装組織から正規の国家機関へ、治安権限を引き継ぐ構想の一端を示している。

同時にハマスは、国境監視や停戦順守を確認するための国連部隊の配置には応じる用意があるとしつつ、ガザ内部でハマスの武装解除そのものを任務とする国際部隊には否定的な姿勢を崩していないと報じられている。つまり、占領が続く状況で一方的な武装解除を受け入れる意思はないが、将来的にパレスチナ国家が主権を回復し、その枠組みの中で武器の行方を決めることには含みを持たせている構図だ。

ハマスはこれまで、完全な武装解除を「越えてはならない一線」と位置づけてきたと指摘されている。その組織が、少なくとも理論上は武器を国家権限に委ねる可能性に言及したことは、内部の他派やパレスチナ解放機構（PLO）系勢力、仲介国との議論が進んでいることをうかがわせる。ただし、ハイヤ氏自身も「武器の扱いはなお各派と仲介者の協議中であり、合意は初期段階にある」としており、最終的な着地点は見えていない。

和平構想とガザ統治の再設計、残る分岐点

現在の停戦は、米国が提示した多段階の和平案を土台としており、イスラエル軍の段階的撤収や国際的な治安部隊の展開、ガザの暫定統治機構の樹立などが議論されている。国連のグテレス事務総長は、この合意を「破壊的な戦争を終わらせるための決定的な転機にしなければならない」と訴え、全ての当事者に完全履行を求めてきた。ハマスの発言は、こうした枠組みの中で、自らの武装の将来を「パレスチナ国家の主権」という条件と結びつけて提示したものだと言える。

一方、国際社会や周辺国は、ガザ統治をどの主体に委ねるかで意見が分かれている。パレスチナ自治政府を中心とする形で行政を再建し、非ハマス系の治安部隊を育成すべきだとの主張もあれば、暫定的な国際管理を強めるべきだとの議論もある。ハマスが言う「パレスチナ当局」への武器移管は、こうした案の一部と重なりつつも、自らの政治的影響力をどこまで維持するのかという別の論点も孕んでいる。

結局のところ、占領の終結時期や条件、パレスチナ国家の具体像が定まらない限り、「占領が終われば武器を渡す」という約束は抽象的なままだ。ガザの人びとにとって重要なのは、誰がどの武器を管理し、誰が日々の安全と生活再建を保証するのかという点である。今回の発言は、その問いに対する一つの方向性を示しつつも、負担とリスクを誰がどこまで引き受けるのかという難しい分岐点が、なお交渉の中心に残されていることを改めて浮かび上がらせている。

ガザの住民から見た「武装解除条件」の重み

ハマスが描く「パレスチナ国家」と武器の行き先

和平構想とガザ統治の再設計、残る分岐点

参考・出典