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イスラム組織ハマスの幹部ムハンマド・ナザル氏が、ガザの移行期間中も現地にとどまり治安管理を維持する考えを示した。武装解除へのコミットは避け、最長5年の停戦に応じる用意に言及した。米国主導の和平計画が動き出す一方、終戦への道筋の難しさが一段と浮かぶ。
移行期の治安と「残る」選択
停電の続く街路で、人びとは配給所の列に静かに並ぶ。そんな現場の空気とは対照的に、政治の言葉は重く慎重だ。ナザル氏はインタビューで、移行期間中はガザに残り、治安管理の枠組みを維持する意向を示した。治安の空白を避け、再建の初動を守る狙いがにじむが、外部の関与とどう折り合うかはなお見えない。
武装解除を問われると、氏は「イエスともノーとも言えない」と述べ、武装解除の定義や武器の引き渡し先をただした。単語の切り取りでは動けないという含みであり、組織の安全保障と住民の安全をどう接続するのかが核心にあると映る。言い換えれば、治安の統治権限と責任の線引きが、和平の最初の難所なのである。
氏はまた、次の段階で議論される武器や治安の取り扱いは、ハマスだけでなく他のパレスチナ武装組織にも関わると指摘した。ガザ内部の合意形成を優先する構図であり、各派の力学を映す。現時点で確認されている範囲では、移行行政を誰がどう監督するのか、国際的な監視や支援の入り方を含め、複数の案が交錯しているとみられる。
停戦「5年」の条件と国家への展望
ナザル氏は、ガザ再建を進める前提として、最長5年間の停戦に応じる用意があると語った。だが無条件ではない。停戦の先にパレスチナ国家樹立への「展望と希望」が示されるかどうかが鍵だという。停戦は終わりではなく、政治的な帰結を求めるための時間なのだという主張が浮かぶ。
再建の現場では住宅やインフラの復旧、学校と病院の再開が急がれる。一方で、停戦期間が長くなるほど、武装勢力の再編を許すのではないかという懸念も根強い。イスラエル側は安全保障上の確約を重視してきた経緯がある。再建資金と治安保証、捕虜・被拘束者の扱いなど、複数のレバーが絡み合い、合意の幅は狭いままだ。
さらに、氏は「武装解除は内容次第」とし、誰に何を渡すのかという実務の不確かさを示した。合意の実装段階でつまずく典型的な論点であり、外からの制度設計だけでは解けない。内部の幅広い合意と、監視可能で段階的な措置の組み合わせが求められるとみられる。停戦の年限より、検証の仕組みこそが問われている。
米国案の第1段階と、なお残る深い溝
米政府は、合意の第1段階が稼働し始めたと発信した。2025年10月13日には、仲介国とともに停戦と人質解放に関する合意への前進を強調し、国際社会の支持声明を相次いで紹介した。人道支援の拡充と段階的措置の履行を促す内容で、戦闘の終息に向けた実務のスイッチが入ったとする立場である。
しかし、ナザル氏が示した「ガザに残る」方針と「武装解除は条件次第」という姿勢は、米国案が想定する治安と統治の再編と正面からぶつかる可能性が高い。国際監視の導入、パレスチナ自治政府の関与、暫定治安部隊の創設など、複数の設計図が取り沙汰されるが、現場の同意なくしては機能しない。ここに最大の溝が横たわる。
一方で、ハマスによる公開処刑の疑惑について、氏は「戦時の例外的措置」であり処刑は殺人犯に限られたと主張した。だが、こうした主張の検証は限られ、独立した調査と説明責任の枠組みが不可欠だ。再建と統治の信頼を支えるのは安全だけでなく、透明性と法の支配である。停戦の履行と同時進行で、その基盤づくりが急がれている。
