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外国人による不適切な就労や在留資格をめぐるトラブルが課題となるなか、茨城県は5日、県庁横断のPT（プロジェクトチーム）を立ち上げる方針を示した。外国人が地域で働きやすい環境づくりを進めつつ、ルール違反には厳格に向き合う考えだ。違反防止の啓発や事業者への指導を強めるための条例案も検討しており、「不法就労をどう防ぎながら、外国人の活躍を支えるのか」という問いが、現場に突きつけられている。
現場は何が変わるのか 企業と外国人のあいだで
今回の方針は、県議会の一般質問で、いばらき自民の石塚隼人県議が不法就労問題を取り上げたことを受けて、大井川和彦知事が答弁する形で示された。新たなPTでは、労働や産業、教育、国際交流など複数部局が連携し、現場で起きている問題の把握と対策の整理を進めるとされる。単独の部局では追い切れなかった情報を持ち寄ることで、農業や製造業、サービス業など、分野ごとに異なる実態に合わせた支援策を検討しやすくなる。
県内では人手不足を背景に外国人材への依存が高まり、企業の約3割が外国人を雇用しているとの民間調査もある。一方で、小美玉市が法務省統計をもとに紹介するところでは、2024年度時点で茨城県の不法就労外国人数は全国でも多く、その約7割が農業分野とされる。現場の農家や中小企業からは、「制度が複雑で在留資格の確認に不安がある」といった声も出ており、適正な雇用を支えながら違反を抑える仕組みづくりが急がれている。
県はすでに「外国人材適正雇用促進キャンペーン」を通じ、職員が事業所を巡回して在留カードの確認方法などを説明している。加えて、県警や入管と連携した街頭キャンペーンや、情報提供の呼びかけも続けてきた。今回のPTや新条例は、こうした点在する取り組みを束ね、啓発と取締りを一体で進める狙いがある。事業者側には、ルールを守るための手続きが増える負担も生じうるが、その分、制度の説明や相談窓口の充実がセットで示されるかどうかが問われる。
なぜ「条例」まで踏み込むのか 国任せにしない県のねらい
県によれば、外国人のルール順守に特化した組織づくりや条例制定に踏み込む自治体は、まだ多くない。地方自治研究機関の整理でも、外国人住民を対象にした独自条例は全国的にみて限定的とされ、通常は一般の「住民」を対象とする条例の中で扱われることが多い。そうしたなかで、茨城県が不法就労防止に焦点を絞った条例を模索するのは、国の入管制度だけでは十分に対応しきれない「地域の事情」があるからだ。
背景には、外国人労働者の増加と、制度の複雑さがある。全国の在留外国人や外国人労働者数は年々増えており、技能実習や特定技能といった在留資格ごとに就ける仕事や地域が細かく決められている。書類上は合法かどうか判断しにくい場面も多く、悪意はなくても結果的に不法就労を助長してしまうリスクがある。県としては、こうしたグレーゾーンを減らすため、事業者に対する分かりやすいルール提示と、相談体制の整備を条例で位置づけたい考えとみられる。
同時に、厳しい取締り一辺倒になれば、外国人が地域社会から排除されてしまう懸念もある。だからこそ県は、「外国人が活躍できる環境」を掲げ、正規に働く人の相談支援や、生活面での情報提供もあわせて強化する方針だ。今後のPTでは、雇用主団体や支援団体、地域住民の声をどこまで吸い上げ、制度設計に反映できるかが焦点となる。不法就労を減らすという目標は共有されているが、その実現の仕方をめぐって、誰がどの負担を引き受けるのかという議論はこれからだろう。静かに始まったこの取り組みが、外国人と地域双方の安心につながるのか、県内の職場の日常が試金石となる。
