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秋の乾いた風が吹くテヘランで、国家安全保障最高評議会(SNSC)のラリジャニ事務局長が2025年10月20日、9月に国際原子力機関(IAEA)と結んだ協力合意を破棄したと表明した。9月下旬に国連制裁が復活した流れを受けた判断で、6月の攻撃以降止まっていた査察再開の道筋は再び揺らいだ。IAEAとの関係修復は後退し、核問題をめぐる地域緊張のにじみが広がっている。
合意破棄の宣言が映す駆け引き
国営メディアの伝えるところでは、ラリジャニ氏はテヘランでイラク高官と向き合い、「合意は破棄された」と短く述べたという。続けて「IAEAから提案が出されれば、もちろん検討する」と余地を残したとも報じられている。現時点で確認されている範囲では、発言の全文や記録は公開されておらず、発言の細部は今後の追認を待つ状況といえる。
表明は2025年10月20日に行われたとみられ、SNSC事務局長という安全保障政策の要が直接言及した意味は重い。9月の合意が現場の査察再開を織り込んだ実務的な枠組みだったからこそ、破棄の宣言は現地の技術作業と国際政治の双方に影を落とす。制裁復活という外圧への応答であると同時に、国内向けの統治シグナルとも映る。
一方で、IAEAからの新提案には「検討する」と扉を半歩開いた。完全な決裂ではないというメッセージを交え、交渉の呼吸を残した格好である。安全保障上の懸念を理由に協力水準を調整する余地を示しつつ、対外的な圧力と国内の法的制約の間で身のこなしを探る場面が続くとみられる。
9月の合意とその重み
9月9日、カイロでグロッシ事務局長とアラグチ外相が署名したのは、保障措置の実施に関する「実務手順」だった。文書は非公開だが、事務局長は「再建に向けた重要な一歩」と位置づけ、現場での具体的なやり取りを積み上げる意思を示していた。合意は、失われた相互の信頼を足元から積み直すための作業仮設台と映っていた。
IAEAによれば、6月の核関連施設への攻撃を機に、6月13日以降はブシェール原発を除き査察や報告の受領が停止した。7月2日にはイラン大統領が協力停止を定める法律を承認し、現場のアクセスは大幅に狭まった。事務局長は攻撃の主体には触れず、協力再開の重要性と安全保障上の懸念に配慮した運用の工夫を強調している。
それでも事務局長は「他の外交プロセスが前進する好機を生む」と語り、査察再開が広い文脈での緊張緩和に寄与する可能性を示唆していた。エジプトの仲介も言及され、地域外交の連なりの中で技術協力を再起動させる狙いが浮かぶ。今回の破棄表明は、その芽をいったん踏みとどまらせる動きと受け止められる。
国連制裁の復活が与えた波紋
9月19日には国連安全保障理事会で制裁救済の継続案が否決され、26日には「スナップバック」を回避する決議も成立しなかった。これにより週末にかけ、核合意下で停止していた国連制裁の再発動が見込まれる展開となった。理事会の分断は鮮明で、加盟国の思惑が交錯する場面が続いている。
こうした決定はテヘランの計算にも直結する。国連制裁の復活が現実味を帯びる中、イラン側は協力水準の見直しを示唆してきたとされ、今回の破棄表明はその延長線上にあるとみられる。制裁と国内法、地域の安全保障環境が絡み合い、技術協力の合意は政治のうねりの中で揺れ続ける構図である。
もっとも、ラリジャニ氏が示した「提案なら検討」という一言は、IAEAの再提案に余白を与える。実務者協議を積み直し、保障措置の運用を安全保障上の配慮と両立させる道を探れるかが焦点だ。透明性の空白が長引けば不確実性は増す。現場の時計を再び動かせるか、次の一手に視線が集まる。