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イスラエル軍は2025年12月20日、シリア南部で過激派組織「イスラム国」（IS）と関係があると疑う人物を拘束し、イスラエル側へ移送したと明らかにした。舞台は、国境線が揺れやすいゴラン高原周辺だ。治安対策の一手に見える一方、越境拘束という形は、地元の不安と外交交渉の火種も同時に連れてくる。
拘束の「成果」と、越境が残すしこり
発表によると作戦は12月17日にシリア南部ラフィド地域で完了し、対象の人物は追加の手続きのためイスラエル領内に移送されたという。周辺では武器も押収したとする報道がある。イスラエル側から見れば、国境沿いで芽を摘む「予防」の色合いが強い。
一方、シリア国営シリア・アラブ通信は同日、南部クネイトラ県でイスラエル軍の侵入があったと報じた。拘束が治安のためであっても、越境の事実が強調されれば「主権侵害」という言葉が立ち上がる。現地住民にとっては、犯行計画の有無より先に、境界が日々の生活圏へ食い込む感覚が現実になる。
緩衝地帯が広がるほど、IS対策の責任は曖昧になる
この拘束は単発の摘発というより、イスラエルがシリア南部で軍の存在感を強めてきた流れの上に置くと輪郭がはっきりする。AP通信は、アサド政権崩壊後の情勢変化を背景に、イスラエルが南部で緩衝地帯のような構えを作り、拠点整備も進めていると伝えている。緩衝地帯は、ひとことで言うと「国境の外側に安全の余白をつくる発想」だ。
ただ、その余白が広がるほど、誰がどこまで治安を担うのかは曖昧になりやすい。Reutersは12月2日、ネタニヤフ首相がシリアとの合意に言及する一方、非武装の緩衝地帯を重視する考えを示したと報じた。越境作戦が常態化すれば、合意形成は遠のくとの懸念も出る。ISの脅威を抑えるはずの動きが、別の緊張を固定化しないかが問われている。
参考・出典
- イスラエル軍、シリアでISのジハード主義者を拘束と発表 写真1枚 国際ニュース：AFPBB News
- Israel detains suspected ISIS operative in southern Syria | The Jerusalem Post
- Israel's military actions inside Syria raise tensions | AP News
- Israel's Netanyahu says Syria deal possible, expects buffer zone（Reuters）
- Israel says it detains suspected ISIS-linked operative in southern Syria（North Press Agency）
