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測量班が巻尺を張り、壁の位置を確かめる。2025年11月14日、国連レバノン暫定軍(UNIFIL)は南部ヤルーン周辺でイスラエル軍が設置したコンクリート壁が撤退線のブルーラインを越え、住民の土地の一部への立ち入りを妨げていると公表した。翌15日、レバノンのジョセフ・アウン大統領は国連安全保障理事会への緊急提訴を指示。イスラエル側は越境を否定し、現場の“線”をめぐる主張が真っ向からぶつかっている。
壁が生んだ“線”のずれ
UNIFILは10月に現地の地理調査を実施し、ヤルーン南西で確認したコンクリート製のTウォール(T字断面の防護壁)がブルーラインを越えていると結論づけた。調査では、約4000平方メートルの範囲でレバノン住民の土地が事実上立ち入り不能になったとされる。11月には追加の壁延伸も観測され、ヤルーン南東でも一部が越境しているとの結果が示された。部隊は結果をイスラエル軍に通知し、壁の移動を求めたという。
ここでいうブルーラインは、2000年のイスラエル撤退を確認するために国連が示した参照線で、国境そのものではない暫定的な線だ。だからこそ、線上の構造物は小さなズレでも大きな影響を及ぼす。UNIFILは、アイタルーンとマルーン・アル・ラスの間で新たに確認された壁は線の南側にあるとしつつ、線の北側へ及ぶ存在や建設行為は国連安保理決議1701に反すると改めて指摘した。固定物が残るほど、撤退線の機能は揺らぐ。
UNの見立てとイスラエルの否定
レバノン大統領府は15日、南部国境でブルーラインを越えて設置されたとするコンクリート壁について、安保理に緊急提訴するよう外相に指示した。提訴文には、越境を示す国連の報告書を添付するよう求めている。UNIFILの調査結果は10月時点でイスラエル軍に伝達されており、部隊は壁の移動と線の全面的な尊重を重ねて促している。
これに対しイスラエル軍は、壁はより広範な軍事計画の一環として2022年に着手したもので「ブルーラインを越えていない」と説明している。双方の主張は食い違うが、国連の現地測量に基づく文書化と、当事国の安全上の判断が真正面で交差している点が今回の特徴だ。評価の基準や測量の手続きが公開されるほど、国際社会が状況を共有する余地は広がるだろう。
暮らしと停戦の継ぎ目
壁が遮るのは地図上の線だけではない。UNIFILは農期に合わせた警備同行で住民の畑へのアクセスを支えてきた経緯がある。耕作地の一部が閉ざされると、収穫や補修といった季節の営みが後ろ倒しになり、安全面の不安が常態化する。撤退線の“手触り”は生活の動線に現れ、わずかな変更が地域の信頼感を削る。物理的な障壁は、緊張の増幅器にも緩衝材にもなりうる。
停戦の枠組みの下でイスラエルには撤退義務がある一方、戦略的とみなす5地点での残置や越境攻撃の応酬が報じられてきた。固定化される壁は、そうした“暫定”の継ぎ目を実体化させる。現時点で確認されるのは、国連が越境と位置づけた区画の存在と、イスラエル側の一貫した否定という対照だ。線をどう守り直すか、その答えは机上の抗議文と現場の移設作業の両方に宿る。