本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。[続きを表示]ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]
中国軍機による航空自衛隊機へのレーダー照射問題で、緊急時の安全弁と期待されてきた日中防衛当局間のホットラインが実際には機能していなかったことが判明した。６日の事案発生後、日本側は防衛当局同士を結ぶ専用回線で中国側への連絡を試みたが、応答は得られなかったと政府が与党会合で説明した。危険行為への抗議は外交・防衛ルートを通じて行われたものの、当事者同士が直接やり取りする仕組みが動かなかったことで、現場の緊張と地域の不安定さへの懸念が一段と強まっている。
高まる空の緊張、連絡手段なき最前線
防衛省によると、レーダー照射は１２月６日午後、沖縄本島南東の公海上空で２回発生した。中国海軍空母「遼寧」から発進したＪ１５戦闘機が、対領空侵犯措置に当たっていた航空自衛隊のＦ１５戦闘機に対し、最初は３分程度、その後は約３０分にわたり断続的に照射したとされる。隊員や機体への被害は確認されていないが、日本政府は「航空機の安全な飛行に必要な範囲を超える危険な行為」として強く抗議し、再発防止を求めた。
他方で、中国側は「自衛隊機が複数回接近して妨害した」と主張し、艦載機が飛行訓練時に捜索レーダーを使うのは通常の措置だと正当化している。過去にも２０１３年のレーダー照射事案や、２０１８年の韓国駆逐艦による照射問題など、認識の食い違いが緊張を長引かせた例は少なくない。今回も、現場のパイロットは短時間の判断を迫られる一方で、当局間の直接対話が立ち上がらないまま双方の主張だけが先鋭化する構図となり、誤算の余地はむしろ広がっている。
「海空連絡メカニズム」の要、なぜ沈黙したか
日中の防衛当局間ホットラインは、偶発的な衝突を避けるための「海空連絡メカニズム」の中核として、２０２３年春に運用が始まった。通常の電話網とは別の専用回線を用い、レーダー照射や艦艇・航空機の異常接近など、現場で何か起きた際に幹部同士が迅速に状況を確認し、エスカレーションを抑えることが狙いとされてきた。しかし報道や関係者の証言によれば、防衛相会談など予定された行事以外で活用された例は乏しく、今回も日本側の呼びかけに中国側が応じなかった。
８日の自民党外交部会などで政府側は、ホットラインを通じた連絡を試みたが中国側が受けなかったと説明し、記者会見でも「日本からは呼びかけている」と強調した。一方、中国は自国の軍事活動を妨害されたと反発し、日本が「レーダー問題」を誇張しているとの立場を崩していない。制度上ホットラインは用意されていても、相手国の政治判断次第で簡単に「つながらない電話」となりうる脆さが露呈した形だ。安全保障の専門家からは、単なる象徴的な仕組みにとどめず、どのような事案で誰が必ず応答するのかという具体的な運用ルールを詰める必要があるとの指摘も出ている。
対話拒否の連鎖を断ち切れるか、問われる危機管理
今回、日本政府は防衛省の発表と防衛相の臨時会見に続き、外務省が中国大使を呼んで正式に抗議し、危険な行為の中止と再発防止を求めた。オーストラリアなど一部の国も懸念を示し、同様の行為を慎むよう求めている。しかし肝心の当事者間ホットラインは沈黙したままで、中国側は「国際法に合致した活動だ」と主張を強めており、双方が自らの正当性を国内外に訴えるばかりでは次の事案を抑止できないとの見方もある。２０１３年のレーダー照射問題が長く尾を引いた経験を踏まえれば、初動段階で事実認識をすり合わせる窓口が閉ざされた意味は重い。
日本としては、同盟国との連携強化や監視体制の拡充と並行して、「挑発には応じないが、連絡窓口は常に開けておく」というメッセージを一貫して示せるかが問われる。他方、中国側が対話チャンネルの重要性をどこまで共有するかは不透明で、ホットラインの死文化を放置すれば、東シナ海や台湾周辺での偶発的な衝突リスクは高まる一方だろう。危機を管理する仕組みを実際に使う意思があるのかどうか、今回の沈黙は両国の安全保障観の差を改めて浮かび上がらせており、その溝を埋められるかどうかが今後の地域情勢を左右することになりそうだ。
