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政府は2025年12月23日の閣議で、「サイバーセキュリティ戦略」の変更を決定した。国家を背景とする攻撃やAIを使った手口の高度化を念頭に、重大事案では警察庁と防衛省・自衛隊が共同で「無害化措置」を行う体制づくりを掲げる。守る範囲が広がるほど、現場の運用と説明責任が次の焦点になる。
「止めるまでの時間」を縮める、重要インフラの宿題
新戦略は、深刻な脅威として中国、ロシア、北朝鮮などを念頭に置き、重大な攻撃には警察と自衛隊が共同で対処すると明記した。被害を受けてから復旧するのではなく、攻撃の連鎖を途中で断つ発想が前面に出る。電力、通信、金融、交通などの事業者には、平時からの通報経路や権限分担の整理、訓練の積み上げが重くのしかかる。
同日の閣議では、重要なコンピューターを不正行為の被害から守るための「基本的な方針」も決定された。制度面が整うほど、現場は「何を守れていれば合格か」を示す指標づくりや監査対応が必要になる。サイバー事故は病院の予約停止や物流の遅延など、生活の体感に直結する。技術の話で終わらせず、止まったときに誰が何を決めるのかを先に決めることが、結局いちばんの防御になる。
能動的防御の実装へ、権限と透明性の線引きが問われる
柱となるのが「能動的サイバー防御」だ。ひとことで言うと、攻撃を受ける前から通信情報の分析などで兆候をつかみ、必要に応じて攻撃基盤を無害化して被害を防ぐ考え方である。関連法が2025年5月に成立した流れを受け、国が「要」となる防御と抑止へ踏み込む姿勢を強めた。AIを悪用した攻撃が新たなリスクだと危機感も示している。
一方で、先回りの防御は「どこまでが許されるのか」という問いを避けられない。通信情報を扱う以上、運用の透明性、監督の仕組み、目的外利用を防ぐ歯止めがなければ、国民の理解は続かない。政府は欧米主要国と同等以上の対応力を目指すとしてきたが、同じ言葉でも社会の受け止め方は国ごとに違う。守るための権限を広げる局面ほど、説明と検証を積み重ねられるかが、戦略の実効性を左右しそうだ。
