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12月2日、政府は2025年度の補正予算案で防衛力強化に充てるうち、防衛省以外の「安全保障関連経費」の中身を公表した。海上保安庁や国連平和維持活動、サイバー防衛など省庁横断の取り組みに、防衛省分と合わせて約1.1兆円を計上する。これにより、2025年度の防衛関連費は当初予算と合わせて11兆円規模となり、政府が掲げてきた国内総生産(GDP)比2%の水準に達する見通しだ。急速に積み増される予算は、現場と私たちの生活にどのような意味を持つのだろうか。
海とネットの最前線に、補正予算がもたらす変化
安全保障関連経費の中核の一つが、領海警備などを担う海上保安庁だ。補正では老朽化した巡視艇の更新費用などが盛り込まれ、小型巡視艇2隻の建造費として15億円が計上された。尖閣諸島周辺での中国公船の活動や、災害時の救難出動が続くなか、港町では「船を動かす人や燃料の手当ても同時に進めてほしい」といった声も上がる。
一方、目に見えにくいのがサイバー分野への投資だ。政府は重要インフラや行政システムへの攻撃が増えるなか、補正予算で複数の省庁をまたぐ監視網や訓練体制の拡充を図るとしている。企業や自治体のネットワークも国の防御網と連携させる構想が進んでおり、実現すれば地方の病院や交通機関の被害リスクを下げる効果が期待される。
今回の補正予算全体は十数兆円規模に達し、その一部として防衛関係費が計上された。物価高対策やエネルギー支援と同じ財布から捻出されるため、海保やサイバーへの投資は暮らしの安全を守る施策として理解される一方、将来世代が背負う国債残高をさらに膨らませる側面もある。
数字が先行する「GDP比2%」、その仕組み
では、なぜ政府はこのタイミングで防衛関連費を一気に積み増したのか。背景には、2022年末に決定した国家安全保障戦略で「2027年度に安全保障関連経費を2022年度GDPの2%(約11兆円)にする」と明記した約束がある。2025年度の当初予算に今回の補正を上乗せすると、防衛関連費はおおむね11兆円となり、ちょうどその水準に届く計算だ。
もっとも、この「2%」は分母に2025年度ではなく2022年度の名目GDPを用いている。将来のGDP成長を前提に試算すると、2027年度時点で実際に防衛費が占める比率は約1.75%にとどまるとの分析もあり、数値の見せ方が実態をどこまで反映しているのか議論が続いている。
一方、政府側は「一層厳しさを増す安全保障環境の中で、必要な装備や体制を前倒しで整えるためだ」と説明する。防衛関係費は5年間で43兆円とする計画の3年目にあたり、ミサイル防衛や無人機、隊員の処遇改善などに重点配分されるが、国民にとっては抽象的な装備名よりも、地域の防災や社会保障とのバランスが気になるところだ。
急増する防衛関連費、問われる使い道と説明
急増する防衛関連費に対しては、「米国やNATOの水準に近づけるための数字合わせではないか」との懸念もある。海やサイバーの現場強化は必要だとしても、装備ごとの優先順位や費用対効果の説明が十分とは言い難く、与野党の国会論戦でも、個別の事業より総額の多寡ばかりが焦点になりがちだ。
他方で、海上保安庁の巡視艇更新のように、老朽化したインフラを維持するための投資は地方経済や雇用にも波及する。造船所の仕事が確保されれば技術継承にもつながるが、予算が事業者側の都合で膨らめば本来必要な人員増や訓練費用が後回しになりかねない。限られた財源をどこに配分するかという選択の重みは、現場ほど強く感じている。
2025年度補正で、政府は「GDP比2%達成」という一つのマイルストーンを前倒しでクリアしようとしている。しかし、防衛費の規模だけでは安全は測れない。海やサイバー、防災や福祉といった多様な分野の中で、誰がどの負担を引き受け、どのリスクを優先的に減らすのか――その筋道を、予算の数字とあわせて丁寧に示し続けることが求められている。
