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自民党が進める防衛装備品の輸出ルール見直しで、殺傷能力のある武器をどこまで海外に出すかが正面から問われている。12日に判明した論点整理案には、侵略を受けている国や戦闘が続く国への輸出の是非が盛り込まれた。平和国家を掲げてきた日本社会は、この議論とどう向き合うのか。
侵略国への武器輸出、市民に突きつけられた問い
論点整理案は、侵略を受けている国や現に戦闘が行われている国への殺傷能力のある装備品の輸出を認めるかどうかを、検討すべき最大のテーマとして掲げた。第三国への流出を防ぐための管理手続きの見直しも論点に挙げ、15日に予定される日本維新の会との協議の場で提示する方向だとされる。
現在の防衛装備移転三原則の運用指針では、輸出は救難や輸送など非戦闘目的の5類型に限られ、国際法に違反する侵略を受けている国には殺傷能力を持つ武器を出さない仕組みになっている。今回の見直しは、この前提に例外を設ける可能性を含み、日本製の武器が進行中の戦争で使われる事態を想定した議論へと踏み込むものだ。紛争を助長しかねないとの懸念も、早くも市民の間で広がりつつある。
一方で、ウクライナ侵攻以降、同盟国や同志国への支援を求める声は強まり、防衛産業の維持にも輸出拡大が不可欠だとする主張もある。遠い戦場のために国内の税金や産業政策をどう使うのか、日本が掲げてきた「専守防衛」や平和国家の理念と折り合いを付けられるのか。論点整理案は、市民一人ひとりにその是非を判断する材料を提示し始めた段階にすぎない。
揺らぐ三原則の枠組みと、これからの選択肢
防衛装備移転三原則は、長年の武器輸出三原則に代わり、2014年に閣議決定された。輸出先や用途を限定しつつ、安全保障協力を広げることを狙った折衷的な仕組みだったが、ロシアによるウクライナ侵攻や東アジアの緊張の高まりを受け、政府は近年、次期戦闘機の国際共同開発などをきっかけに運用指針を段階的に緩和してきた。完成品の第三国移転を認める一方で、審査の厳格化もうたっている。
産業界からは、防衛装備の海外移転を拡大しなければサプライチェーンが維持できず、有事に必要な装備を供給できないとする危機感が繰り返し示されている。経団連は今年、公的支援の拡充と制度緩和を求める提言を公表し、装備移転を「同盟国・同志国との連携を強化する手段」と位置付けた。これに対し、市民団体や一部メディアは、武器輸出の制約を取り払う動きが「戦争をする国」づくりにつながると警鐘を鳴らしている。
今後、論点整理案は日本維新の会との協議を経て、自公連立の調整や国会審議へと舞台を移す見通しだ。輸出先の基準や第三国移転の歯止めをどう設けるのか、判断過程をどこまで公開するのかは、政権だけでなく国会と市民社会が共有すべき課題である。殺傷兵器の輸出をめぐる線引きが静かに書き換えられていくのか、それとも公開の議論を通じて新たな合意を探るのか。日本の安全保障政策の方向性は、今まさに岐路に立っている。
