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日本が独自の高精度な「日本版GPS」を目指す計画が、具体的な形になりつつある。三菱電機は12月1日、準天頂衛星システム「みちびき」の7号機の機体を報道陣に公開した。同日、JAXAと三菱重工業は、この7号機を搭載するH3ロケット9号機を2026年2月1日に種子島宇宙センターから打ち上げると発表している。今年12月7日には5号機の打ち上げも予定されており、7機体制が整えば、誰のスマートフォンにも関わる「位置情報インフラ」の姿が変わっていく。
センチメートル級の測位がもたらす、現場の変化
みちびきは、日本とアジア・オセアニア地域向けに設計された衛星測位システムで、現在は4機を中心に運用されている。今年2月に6号機が加わり、12月7日に5号機がH3ロケット8号機で打ち上げられる計画だ。これに続いて7号機が軌道に乗れば、日本上空には常時4機以上のみちびき衛星が見える状態となり、ビル街や山間部でも安定した測位がしやすくなる。
7機体制の強みは、精度の桁が一気に変わる点にある。現在、スマートフォンの地図アプリで表示される位置は数メートル単位の誤差が一般的だが、みちびきは補正信号と組み合わせることでセンチメートル級の測位も可能になるとされる。自動運転車や農業用の無人トラクターでは、車線の中央や畝のラインを正確にトレースできるかが安全性と効率を左右するため、この精度向上は現場の運用設計そのものを変えるインパクトを持つ。
災害対応やインフラ点検の分野でも、衛星測位の役割は増している。みちびきは、位置と時刻の情報に加えて、災害・危機管理メッセージを一斉配信する機能も備える。地上通信が途絶えた地域でも、避難情報や重要インフラの監視データを衛星経由で届けられれば、自治体職員やライフライン企業は限られた人員で被災エリア全体を把握しやすくなる。高精度測位は、単なる「便利なナビ」から、地域の安全を支える基盤へと比重を移しつつある。
なぜ今、日本は独自測位網に投資するのか
今回公開された7号機の機体は、国内メーカーによる一連の開発の集大成でもある。三菱電機が衛星本体の製造を担い、三菱重工とJAXAがH3ロケットで打ち上げる体制は、日本の商用・官需の宇宙産業を横断したプロジェクトと位置づけられる。他国の測位衛星に全面的に依存せず、自前の衛星だけで連続的に位置を測れる体制を整えることが、今回の整備計画の核心だ。
背景には、衛星測位が安全保障や経済安全保障の要となっている現実がある。米国のGPSや欧州のGalileo、中国のBeiDouなど、各地域は独自のシステムを持ち、軍事・物流・金融インフラを支えている。日本も長らくGPSに頼ってきたが、万一の障害や国際情勢の変化で利用が制約された場合、国内の交通・港湾・建設現場は大きな影響を受ける。7機体制は、こうしたリスクを緩和しつつ、海外システムとも互換性を保つ「二重化」の一歩といえる。
また、H3ロケットの商業利用を見据えた実績づくりという側面もある。みちびき5号機と7号機は、それぞれH3の8号機・9号機で打ち上げられる計画であり、連続的な成功は国際市場での信頼につながる。衛星とロケットを一体で提供できることは、海外案件の受注やアジア諸国との協力を進めるうえで、日本企業にとって重要な競争力となる。
7機の先に見据える11機体制と、残された問い
7号機の打ち上げが成功すれば、2026年度から本格的な7機体制での運用が始まる見込みだ。一方で、政府と関係機関は既にその先を見据えている。バックアップの強化や測位エリアの拡大を目的に、将来的には11機体制への拡張が検討されており、長期にわたって衛星を入れ替え続ける前提のインフラ整備となる。
このスケールの投資は、当然ながら税金と利用料で賄われる。衛星測位を直接ビジネスに生かす自動運転や物流、建設・農業などの産業にとっては、精度向上による効率化のメリットが見込まれる一方、その果実をどこまで広く生活者に還元できるかはまだ見えない。位置情報サービスの高度化が、都市部だけでなく離島や中山間地域の移動支援、高齢者の見守りといった課題にも届く設計になっているかが問われる。
米欧中もそれぞれ次世代の測位衛星を打ち上げる中で、日本の「みちびき」は量ではなく質でどう差別化していくのか。今回の7号機公開と連続打ち上げ計画は、世界の測位インフラの中で日本がどの役割を担うのか、その選択を迫る通過点でもあるだろう。
