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中国のSNS画面に「日本はすでに代償を払った」という文字列が何度も流れている。高市総理の台湾有事をめぐる発言をきっかけに日中関係が冷え込むなか、この言葉を題名にした中国国営メディアの論評が、若者のスマートフォンを通じて一気に広がり、検索ランキングの頂点に躍り出た。背後には、観光や水産物を巡る対抗措置が日本社会にじわりと影を落とす現実がある。
SNSで拡散した国営メディアの「代償」論評
論評を出したのは、在外華人向けの発信も担う国営通信社「中国新聞社」だ。11月21日夜に自社サイトやSNSで公開すると、中国版検索サイトのランキングで23日朝に1位を占めたと報じられている。記事は、高市総理の発言が中国側の「レッドライン」を越えたとする認識を前提に、日本がすでに痛みを味わっていると強い言葉で描写する。
本文では、中国政府が自国民に日本旅行を控えるよう注意を呼びかけた措置や、日本産水産物の輸入をほぼ止めた対応などを列挙し、それらが観光業や漁業など日本経済に損失を与えたと主張する。さらに、中国の専門家のコメントとして「圧力によって高市総理が発言を抑える可能性」と「外交で行き詰まり短命政権になる可能性」という二つのシナリオが紹介され、政治的な揺さぶりの色彩もにじむ。
対抗措置が映す日中関係と日本への重さ
こうした論評が注目される背景には、ここ数週間で加速した緊張がある。台湾有事、つまり台湾で軍事的危機が起きた場合の対応をめぐる高市総理の国会答弁に対し、中国の王毅外相は「一線を越えた」と記者団に語り、強い不満を示した。主要国が集まったG20首脳会議でも、日中首脳の正式な会談は実現せず、対話の場が細りつつある状況が続いている。
一方で、中国国内のSNSでは今回の論評に対し、「日本への打撃はまだ十分ではない」といった過激な書き込みも目立つ。国家メディアが「すでに代償を払った」と強調することを、これ以上のエスカレーションを抑えるメッセージと受け取る向きもあるが、世論の一部はなお強硬姿勢を求めているように見える。高市政権にとっては、対抗措置による経済的負担と、国内外からの視線が重なる中で、発言と外交戦略の舵取りが一段と難しくなっている。
