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冷たい風が吹き抜けた10月の終わり、日本各地で続いた自衛隊統合演習（07JX）が2025年10月31日に幕を閉じた。統合幕僚監部は、陸・海・空の各自衛隊が10月20日から実動訓練を重ね、平素からの統合運用能力を維持・向上させることを目的に実施したとしている。日本周辺の安全保障環境が一段と厳しさを増す中、実地での検証と教訓抽出が急がれる局面である。
07JXの実施概要と狙い
07JXは昭和54年度に始まった自衛隊統合演習の系譜に連なる。統合運用体制への移行後では本年度で18回目に当たり、隔年で指揮所演習と実動演習を切り替えてきた。本年は実動演習の年であり、千歳、三沢、百里、入間、小松、築城、厚木、浜松、日出生台、大湊、横須賀、呉、佐世保など全国の施設を活用し、陸海空が連接する形で連携手順と所要能力の点検を進めたとみられる。
数字で整理すると、期間は2025年10月20日から31日まで。統合演習は昭和54年度開始、統合運用体制移行後では通算18回目、そのうち実動演習が10回、指揮所演習が8回という内訳である。舞台は航空基地や演習場、主要港湾地区に広く分散され、全国規模での展開・集結・連接の手順を重ねた点が特徴だ。訓練種目や参加規模の詳細は段階的に整理され、運用所要の見直しにつながる。
周辺情勢とロシアの反応
現時点で確認されている範囲では、ロシア外務省は日本周辺での演習や日米の共同訓練に対する抗議表明を繰り返してきた。今年7月には、米軍主導演習への航空自衛隊の参加に関し、モスクワの日本大使館へ「断固とした抗議」を行ったと発表している。抗議は政治的メッセージの色彩が強く、ロシア側は自国の安全保障上の脅威認識を前面に出す構図が続く。
日本周辺の軍事活動も緊張感を底上げしている。10月24日には核搭載能力を持つとされる露Tu-95爆撃機などが日本周辺を飛行し、航空自衛隊が対処した。露側は「定期哨戒」と主張するが、わずかな距離と頻度の積み重ねは、相互の警戒態勢を強化させる要因である。演習の実施と周辺活動の活発化が重なることで、誤認や偶発のリスク管理が一段と問われている。
日本側の位置づけと焦点
07JXの主眼は、統合運用のボトルネックを洗い出し、部隊間の「つながり」を磨くことにある。航空と海上による警戒監視、陸上部隊の移動・集結、拠点の防護、指揮・通信の冗長化など、平素からの運用を前提にした地道な工程が中心だ。訓練の成果は、所要兵站の再評価、配置・シフトの最適化、指揮系統の簡素化といった形で年度内の計画に反映されるとみられる。
一部では「規模」そのものが注目されがちだが、実動演習の価値は場当たりの火力展示ではなく、分散・機動・持続の三拍子を支える実務的な連接に宿る。地理的広がりが大きい本邦では、遠隔の航空基地や主要港湾での連携が遅延なく回ることが生命線だ。点検結果を踏まえ、来年度以降は拠点の脆弱性対策や分散展開の練度、情報共有の高速化が一層の焦点となる。
見通し―緊張管理と透明性
訓練は防衛目的であり、実施の予告と終了の明示、エリアや時程の共有など、透明性を確保して進められてきた。周辺国の活動が活発化する今こそ、予定や手順を明確に示すことが誤解の抑止に資する。加えて、演習後の検証結果を要点だけでも速やかに公表することは、内外の理解を深める実務的な手当となるだろう。
一方で、近接活動の頻度が高まれば偶発事案のリスクも上がる。専門的なホットラインの運用確認や、海空の安全措置に関する合意の遵守、訓練域の設定と通知の丁寧さなど、緊張管理の作法が試される。日本側は、統合演習で得た教訓を実運用に落とし込みつつ、対外説明の細やかさを欠かさないことが求められる。
