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日本政府が、陸上自衛隊の防空システム「03式中距離地対空誘導弾(中SAM)」をフィリピンに移転する案をめぐり、水面下で協議を進めている。高市政権は、防衛装備品の輸出を救難など5つの用途に限定してきた運用ルールを、来年前半にも見直す方針だ。実現すれば、日本製の防空ミサイルが初めて前線国に提供され、地域の安全保障協力を一段と深める転機となりそうだ。
前線フィリピンの防空力と住民の不安
南シナ海で中国との緊張が続くフィリピンは、近年になってようやく本格的な地上配備型防空システムの整備を始めた。日本のレーダー供与などに加え、退役予定の防空ミサイルの取得も要望している。中SAMが加われば、首都圏や沿岸基地の上空を中距離で守る「新しい傘」となりうる。
一方で、比海軍は日本から老朽化した護衛艦や哨戒機の移転交渉も進めており、日本製の装備が前線の港や基地に並ぶ光景が現実味を帯びてきた。抑止力が高まる半面、基地周辺の住民にとっては、有事の際に標的となる設備が増えることでもある。防衛強化と生活の安心をどう両立させるかという悩みは、比政府だけでなく自治体レベルにも広がりつつある。
日本の南西諸島でも、同じ中SAMの配備が進み、島の住民は訓練で走るミサイル車両を日常的に目にしている。今度はその装備が海外に渡り、フィリピンの空を守るかもしれない。日本の納税者が負担してきたシステムが、他国の前線を守る道具にもなるという現実は、これまでとは違う安全保障の関わり方を示している。
政権が急ぐ輸出ルール転換、その仕組み
日本の防衛装備移転は、2014年に制定された「防衛装備移転三原則」とその運用指針に縛られてきた。現在は、救難・輸送・警戒・監視・掃海という5つの機能に該当する装備のみ、原則として輸出が認められている。23年末の見直しで、米国向けの迎撃ミサイル部品など一部の致死性装備は容認されたが、完成品の武器を第三国へ出すハードルは依然として高かった。
高市政権は、この「5類型」という機能ごとの縛り自体を撤廃し、個別案件ごとに安全保障上の必要性などを判断する仕組みに切り替えようとしている。三原則は国会制定法ではなく内閣決定に基づくため、国家安全保障会議と閣議だけで運用指針を改めることが可能だ。そのため、与党内の合意が固まれば、短期間で方針を転換できる構造になっている。
ただ、朝日新聞などは社説で、致死性の高い装備の輸出を拡大する議論が国会で十分に検証されていないと指摘してきた。中SAMのような具体的案件が先に走ることで、「相手国の要望に応えるためにルールを変える」印象が強まりかねない。防衛産業の維持につながるとの期待がある一方、陸上自衛隊の部隊からは、自国防衛に必要な数を確保できるのかという懸念も語られている。
中SAM移転が描く「ネットワーク型防空」
中国紙「環球時報(グローバル・タイムズ)」は、共同通信の報道を引用しつつ、中SAMの比輸出計画や与那国島への配備強化を「戦後の平和憲法からの逸脱」と批判する専門家の見方を紹介した。しかし中SAMは、他国領空への攻撃を目的とした長距離打撃兵器ではなく、自国領域や基地を守るための純然たる防空システムである。台湾や南シナ海の制空権争いに直接介入するとの懸念は、装備の特性を踏まえれば現実的とは言い難い。
他方で、日本とフィリピンは、相互アクセス協定の発効や中古護衛艦の移転交渉などを通じて、安全保障面での結びつきを急速に強めている。日本製の中SAMが比軍の防空網に組み込まれれば、米軍や他の同盟国のシステムとも連携し、東シナ海から南シナ海にかけて「ネットワーク型防空」の一角を日本が担うことになる。日本はもはや、装備を自国内だけで完結させる立場ではなくなりつつある。
輸出ルールの見直しは、地域の抑止力を高めつつ、信頼できるパートナーとの協力を広げていくための一歩だ。防衛専用装備である中SAMの移転をめぐる議論は、日本がどのように国際協力へ役割を広げ、安全保障環境の安定に貢献していくのか──その方向性を問う前向きな局面にさしかかっている。
参考・出典
- Japan weighs first Type 03 air defense system export to Philippines as Chinese pressure mounts
- Japan’s reported Type 03 missile export plan to Philippines breaks away from pacifist constitution, could undermine regional peace: expert
- Japan’s New Arms Export Policy: An Unfinished Breakthrough
- EDITORIAL: Restrictions on defense exports should remain for deadly arms
