日本が半導体素材を対中カード化か　フォトレジスト輸出停止報道で波紋

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2025.12.09

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日本と中国の間で外交的な対立が激しくなるなか、日本政府が対中圧力の新たなカードとして半導体素材を使い始めたとの観測が広がっている。台湾有事への軍事関与に言及した高市早苗首相の発言に反発し、中国が自国民に対する日本渡航の自粛を呼びかけた直後、一部報道が「日本企業が中国向けのフォトレジスト輸出を事実上止めた」と伝えたからだ。

中国工場を揺さぶる「静かな輸出制限」

半導体の微細加工に欠かせないフォトレジストは、日本企業が世界シェアの大半を握る素材だ。中国の多くの工場は、露光装置の保守サービスも含め、日本からの供給網に深く依存してきた。そこに「許認可の遅延」や「出荷停止」といった情報が流れれば、生産計画はすぐに見直しを迫られる。

実際、香港の経済紙や韓国メディアは、SMICや長鑫存儲（CXMT）といった中国メーカーで高性能メモリーや先端ロジックの増産計画に遅れが出る可能性を指摘している。日本政府や主要メーカーは正式な禁輸措置を認めていないものの、個別審査の厳格化やサービス拠点の縮小が「事実上の制限」と受け止められている。

背景には、高市首相の台湾発言をきっかけにした中国側の対抗措置がある。中国外務省は日本を名指しで批判し、日本渡航の自粛を勧告、航空会社も日本路線の払い戻しに応じる姿勢を示した。観光や小売への打撃を覚悟しつつ、日本が安全保障上の懸念を理由にサプライチェーンを絞る構図は、経済と安全保障が一体化した新しい対立パターンを映し出している。

韓国素材メーカーは好機か新たな火種か

こうした動きに、韓国の半導体素材業界は神経をとがらせている。韓国の経済紙「アジア経済」は、日本から中国へのフォトレジスト供給が細れば、SMICやCXMTの増産が鈍り、サムスン電子やSK hynixが競争圧力の緩和という形で間接的な恩恵を受け得ると分析した。同時に、日本企業との協力強化や共同投資のシナリオにも言及する。

ただ、韓国勢は過去に日本の輸出管理強化の直撃を受けており、「他国依存のリスク」は身をもって経験済みだ。2019年の素材規制をきっかけに、韓国政府と企業はフォトレジストや高純度フッ化水素の国産化を急ぎ、日本依存度をある程度下げてきたが、最先端品では依然として完全な自立には至っていない。中国向け供給の穴を埋める役回りは、決してリスクが小さいとは言えない。

日本が対中けん制の一環として素材カードを切れば切るほど、韓国や台湾を含む周辺諸国の企業は、新しい商機と同時に、報復や規制の連鎖という不確実性も背負い込むことになる。日本と中国の対立が長期化する中で、誰がどの程度のリスクを引き受けるのかという計算が、東アジアの半導体地図を静かに書き換えつつある。