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自民党の高市早苗首相の下で、政府・与党が「スパイ防止法」に向けた検討を始めた。国外の情報機関による機微情報の流出を抑える狙いだが、何を「秘密」とし、誰を対象にするかで制度設計は大きく変わる。防諜の強化と、通信の秘密や表現の自由をどう同時に守るかが焦点になる。
現場は「情報に触れる資格」を問われ始める
企業や大学の研究現場では、国の安全保障に関わる情報に触れる際の手順が、すでに細かくなっている。内閣府の資料によると、重要経済安保情報保護活用法（重要インフラやサプライチェーンなどの重要情報を守る枠組み）は、2024年に成立し、2025年5月に関連資料が公表された。扱える人を絞る「適性評価」の導入が、日常業務の線引きに直結する。
こうした流れに、罰則強化や防諜施策の「基本法」構想が重なる可能性がある。参政党は2025年11月、情報漏えいへの罰則を重くする案や、防諜施策を進める法案を参院に提出したと、nippon.com（時事通信配信）が伝えた。もし議論が進めば、現場の実務は「守るべき情報」の整理だけでなく、相談窓口や教育、委託先管理まで広がり得る。
賛否の分かれ目は、監視の歯止めと説明責任
与党側では、自民党と日本維新の会が2025年10月の連立合意で、スパイ防止関連の法整備について検討を始め、早期成立を図る方針を掲げた。テレビ朝日なども、連立合意を受けて高市内閣発足へ向かう動きを報じている。野党の一部にも前向きな姿勢はあるが、争点は「取締りの必要性」そのものより、権限がどこまで広がるかに移っている。
論点整理をすると、①秘密指定の範囲が恣意的にならない仕組み、②捜査・情報収集に司法の関与をどう組み込むか、③報道・取材や市民の活動が萎縮しない担保、の三つに集約される。徳島新聞は社説で、監視社会につながる懸念を示した。防諜を強めるなら、制度の透明性と独立したチェックを同時に積み上げることが、法案審議の前提になりそうだ。
