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与野党の応酬が続いた衆院予算委で、高市早苗首相が台湾有事をめぐり「中国の軍艦が武力行使に踏み切れば、存立危機事態にあたり得る」との認識を示した。政府が具体例に触れるのは異例で、集団的自衛権の適用判断に一歩踏み込んだ形だ。国会論戦は、想定と運用の境界をあらためて映した。
踏み込んだ国会答弁の意味
与野党の質問が重なる委員会室で、首相は岡田克也氏の問いに答えた。2025年11月7日、台湾有事の具体例をただされ、「戦艦を使い武力の行使を伴うものであれば、存立危機事態になり得る」と述べた。政府がこれまで避けてきた線引きに、限定的ながら言葉を置いた。
首相は、中国が台湾を海上封鎖する場合を念頭に、シーレーン遮断、武力行使、サイバーや情報操作といった複合的な圧力を挙げた。どれか一つで直ちに認定されるわけではなく、発生した状況を総合し、国の安全に与える影響の重さで判断するとした。
一方で、民間船を並べるような妨害は該当しにくいとしつつ、戦闘が進む中での海上封鎖や無人機の飛来が重なれば、評価は変わり得ると語った。威圧と武力の境目が曖昧になりがちな海域で、判断の難しさをにじませた答弁だった。
法律上の位置づけと運用の鍵
「存立危機事態」は、国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に限り、限定的な集団的自衛権の行使を認める概念だ。武力行使は最後の手段であり、他に適当な手段がないことなど厳格な条件が重なる。
認定の手順は、内閣が総合的に判断し、国会の承認を経る流れである。首相が強調した「個別具体の状況に応じる」との一文は、法の運用が抽象的な一般論ではなく、事実関係と時間軸に強く依存することを指す。政治と専門判断の接点が問われる局面だ。
従来、台湾をめぐる事態は、補給や輸送を中心に他国を後方支援できる「重要影響事態」の枠で語られることが多かった。今回の答弁は、武力行使を伴う封鎖など特定の条件下で、より踏み込んだ枠の可能性に触れた点で、議論の射程を広げたといえる。
影響と今後の焦点
与党内では以前から、麻生太郎氏が「政府が判断する可能性は極めて大きい」と語っていた。首相自身も総裁選の場で「台湾有事は日本有事に間違いない」と強調している。国会での明確化は、その延長線上に位置づくが、法運用の責任は格段に重くなる。
影響は安全保障政策の現場に及ぶ。自衛隊の警戒監視や機雷掃海の態勢、邦人退避や海上交通の確保、サイバーや情報領域での防護まで、複合的な計画の具体化が欠かせない。海上封鎖に近い状況で、どこからが武力行使と交錯するのか、実務の線引きが要となる。
他方で、抑止の言葉が過度な緊張を招かない工夫も必要だ。透明性の高い判断基準、歯止めの手順、同盟調整の時間設計を丁寧に積み上げることが、誤算を避ける近道となる。静まった委員会室に残ったのは、鉛筆の走る音と、重たい宿題だった。
