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参院本会議の壇上で、高市早苗首相が言葉を選んだ。南鳥島周辺のレアアース開発をめぐり、日米で具体的な協力の進め方を検討すると表明したのは、代表質問の最中だ。資源の確保と経済安保を重ねる日本が、深海の可能性を外交の枠組みへと結び直し始めた。
国会で示した「日米協力」の方向性
2025年11月6日午前、参院本会議の代表質問で、国民民主党の舟山康江議員が南鳥島の開発方針をただした。高市首相は、日米間で具体的な協力の進め方を検討する、と応じた。調査から実装、資金や人材まで、幅を持つ論点に踏み込む合図である。
背景には、先週の首脳会談で確認された重要鉱物の協力枠組みがある。供給網の強靭化を掲げる両政府は、採掘や製錬、流通の連携を視野に入れる。国会での発言は、その枠組みを現場の計画へ落とし込む工程の起点になる。
同じ場で、企業・団体献金の規制強化には慎重な姿勢も示した。政治資金の論点と並走しつつ、資源政策は実装段階の設計が問われる。言葉は短いが、政府内の調整の重さをにじませた場面である。
南鳥島レアアースの意味と技術の壁
南鳥島は東京の南東およそ1900km。周辺の海底には、深さ5000-6000mにレアアースを多く含む泥が広がるとされる。大学や研究機関が2010年代から分析を重ね、揚泥や選鉱の技術を磨いてきた。資源は深いが、手を伸ばす準備は着実に進む。
海底からの安定的な回収は難題だが、来年1月に技術実証の試験掘削を始める計画が報じられている。さらに、将来の試行運転では1日あたり約350トンの泥を回収する構想も伝えられた。計画は段階的に、無理のない歩みに置かれている。
一方で、6000m級の深海での作業は、機器の信頼性や環境影響評価、コストの最適化が避けて通れない。揚げた泥の処理や製錬の国内体制、鉱区設定や制度の整備も要る。海の底で拾う一粒を、産業の部品へ変える道筋を重ねていく。
経済安保とサプライチェーンの再設計
レアアースは自動車から衛星まで幅広い基盤素材であり、特定地域への依存が長年のリスクになってきた。日米が歩調を合わせる意味は、単なる資源確保にとどまらない。産業政策と安全保障が交わる地点で、共通の投資と標準作りが進む。
もし南鳥島が商業段階へ近づけば、国内のサプライチェーンは設計を変える。輸入の揺らぎに備える在庫や調達の前提、製錬・磁石までの一貫化など、企業の描く地図は更新を迫られる。新たな投資が、海と工場を一本の線でつなぐ。
国会のやり取りは数分でも、深海の現場と国際交渉の時計は長く動く。答弁で示された方向性は、静かに次の準備へ火を入れた。波の下と議場の間で、いくつもの手が同じ図面を描き始めている。
