未明のキーウを襲った空からの一撃　高層住宅炎上で1人死亡・複数負傷

サイレンが鳴り響いたのは、ほとんどの住民が眠っていた時間帯だった。2025年11月25日未明、ウクライナの首都キーウでロシア軍によるとみられる空からの攻撃があり、高層住宅が燃え上がった。市当局によると、この攻撃で少なくとも1人が死亡し、複数の住民がけがをしたという。現場では消防隊がはしご車を伸ばし、炎の上がる階へと急いだ。

住宅直撃の夜、キーウ東岸で起きたこと

キーウ市軍事行政トップのティムール・トカチェンコ氏によると、攻撃が始まったのは現地時間の午前1時ごろだった。ドニプロ川東岸の地区では、高層住宅の中層部が直撃を受け、6階と7階付近で激しい火災が発生したと説明している。防空部隊は市周辺の上空で迎撃を続けていたが、すべてを止めることはできなかったという。

消火活動は夜明け前まで続いた。救急隊によると、9階建ての建物では6階と7階の一部が大きく壊れたが、炎はやがて鎮圧され、17人が避難・救助されたという。一方で、この攻撃で少なくとも1人が命を落とし、7人が負傷したことも確認されている。市内では別の高層住宅や送電設備も被害を受け、午前5時すぎには再び空襲警報が鳴り響いた。

相次ぐ空襲と首都への圧力

キーウは2025年に入ってからも繰り返し大規模な攻撃を受けてきた。9月7日には、ロシア軍が数百発規模の無人機やミサイルを発射し、政府庁舎や住宅地を含む少なくとも10か所が被害を受けたと報じられている。この時は首都だけで2人が死亡し、20人が負傷するなど、市街地への攻撃が深刻さを増していたとされる。

今回のように住宅やインフラが繰り返し攻撃されることで、市民の暮らしは常に中断の危機にさらされている。キーウ市によれば、これまでの空襲でも電力網や給水設備が損傷し、停電や断水が長時間続いた事例が相次いだ。国際人権団体も、ロシア軍が民間施設を標的とする攻撃を増やしていると指摘しており、住民は防空警報のたびに避難と再建を繰り返す日常を強いられている。

避難と支援、重なっていく日常

キーウ市は、これまでの空襲で被害が出るたびに支援体制を動かしてきた。別の大規模攻撃では、市内で住宅や公共施設が多数損傷し、ソロミヤンスキー区などに人道支援拠点が設置された。市は被災世帯に一時金の支給や一時的な宿泊先の提供を行い、生活再建の相談窓口も設けている。今回も同様の支援が急速に検討されているとみられる。

しかし、制度があっても、繰り返される避難は人々の心身に重くのしかかる。夜中の警報で子どもを抱えて階段を駆け下りる日々が続き、自宅に戻ると窓ガラスや家具が壊れていることも少なくない。人権団体は、こうした都市部への攻撃が長期化することで、住民の安全だけでなく教育や医療など基本的な権利が脅かされていると警鐘を鳴らしている。

参考・出典

• Russian drones trigger fires in Kyiv dwellings, killing one, officials say
• Ukraine government building damaged in Kyiv in the largest Russian attack since the war began
• Ukraine: Escalating Russian Attacks on Civilians | Human Rights Watch
• Search and rescue operations finish in Kyiv after missile and drone attack