本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]
笛と太鼓のリズムに合わせ、黄色や青の旗がRoyal Mint Court前で揺れ続けた。2025年11月15日、ロンドン中心部で中国が計画する巨大大使館への反対デモが行われた。香港からの移住者やチベット、ウイグルの人々、近隣住民が列をなし、監視や言論の萎縮を招くとの不安を掲げた。政府判断が再び延びるなか、声は途切れなかった。
巨大化する計画と膨らむ不安
計画地はテムズ川にほど近い歴史的施設Royal Mint Courtだ。中国はここに、欧州でも最大級とされる大使館群を整備し、業務棟や文化交流施設、宿舎を備える構想を示してきた。規模の大きさは存在感の強さと表裏一体で、地域の暮らしや観光動線への影響、抗議活動の受け皿をどう確保するかが問われている。
デモ参加者の多くは、祖国での弾圧を逃れて英国にたどり着いた人々だ。彼らは「在外の反体制派を監視する拠点になりかねない」と訴える。国外での圧力や嫌がらせを指すトランスナショナル・リプレッション(国外での圧力・監視)の懸念は、拡張された施設や動線と結びつくほど、具体的な生活不安として語られていた。
一方で、中国側は老朽化した史跡を保全・活用し交流を促す計画だと主張してきた。だが、抗議の現場に立つ人々は、文化交流の名の下に監視が濃くなる可能性や、外交団の広い治外的権限が地域社会にもたらす緊張を指摘する。日常の風景に大使館の警備線が入り込み、自由な集会の場が狭まることへの戸惑いがにじむ。
長引く手続き、政府判断は12月へ
この案件は当初、地元自治体が審査していたが、2024年10月に英政府が「コールイン(地元の計画審査を中央政府が引き取り最終判断する手続き)」を発動した。自治体は安全や交通、抗議規模への懸念から不承認の立場を示し、年明けに公開審理が開かれた経緯がある。以後のやり取りは中央政府の裁量が大きくなった。
審査の過程では、提出図面の一部が非開示とされた点など、情報の透明性をめぐる論点も浮上した。英側は説明を求め、中国側は「手続き上の要件は満たす」と応じてきた。巨大施設の設計が安全保障と交差するほど、図面の解像度ひとつが政治性を帯びる。技術的な審査と外交的な配慮が、同じ机の上に置かれている。
政府の最終判断は当初の期限から2度延長され、延長後の期限は2025年12月10日とされた。中国外務省はたびたび不満を示し、英国側は安全保障を最優先とする姿勢を崩していない。決定の遅れは、二国間関係の緊張と国内の自由・安全の折り合いの難しさを映す。詰めの時間は、地域住民の暮らしにも静かな影を落としている。
見えてきた論点、残る溝
争点は大きく3つに収れんしつつある。第1に安全保障だ。施設の規模、来訪者の多さ、周辺の観光・ビジネス動線を考えた警備体制は十分か。第2に透明性である。計画情報の非開示部分や運用の説明責任はどこまで果たされるべきか。第3に民主社会の原則で、抗議権や地域の意思形成と、外交の必要との調整に正面から答える必要がある。
2月以降、現地では複数回の大規模抗議が実際に起き、香港やチベット、ウイグルの人々が連帯してきた。今回の集会もその延長線上にある。政治的立場の違いを越えて、地域の安全と自由な表現の場を守りたいという思いは共通している。決定が下るまでのわずかな時間に、当事者が納得できる説明と設計の見直しが積み上がるかが鍵になる。
人の流れが途切れた歩道に、手描きのプラカードが少しだけ残った。声を重ねた時間の余韻が、地域に小さな境界線を引いたまま静かに留まっている。