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ノルウェーのノーベル研究所は9日、2025年のノーベル平和賞受賞者マリア・コリーナ・マチャド氏の記者会見を、開始予定の直前になって中止した。長期の渡航禁止措置で1年以上地下に身を潜めてきたベネズエラ野党指導者は、授賞式前日になっても所在が確認できない。民主化の象徴とされた受賞者本人が姿を現せない状況は、同国の政治的な行き詰まりを改めて浮かび上がらせている。
姿の見えない受賞者、揺れる授賞式
研究所によると、会見はオスロ市内で現地時間9日13時(日本時間同日21時)から行われる予定だったが、開始数時間前に正式に取りやめが発表された。ロイター通信などは、当局がマチャド氏の居場所や移動手段を把握できておらず、ノルウェー側も「どこから到着を目指しているのか分からない」との認識を示していると伝えている。
一方で、マチャド氏の家族は既にオスロ入りしており、10日の授賞式にはノルウェー王室や中南米の首脳らが出席する予定だとAP通信や英紙ガーディアンは報じる。それでも当の受賞者が姿を見せられるかは不透明で、ノーベル平和賞の講演が誰によってどのような形で行われるのか、式典自体のあり方が問われつつあるといえる。
ベネズエラ情勢と「民主化の象徴」の重さ
マチャド氏はベネズエラの政党「ベンテ・ベネズエラ」を率いる野党指導者で、ニコラス・マドゥロ政権を厳しく批判してきた。政府から長期の渡航禁止や公職就任の制限を受け、2024年大統領選の候補から排除された後は、治安当局の追及を避けて地下に潜伏しているとされる。ノーベル委員会は、同氏を「独裁から民主主義への平和的移行を目指す市民的勇気の象徴」と評価している。
それだけに、授賞式の前日に居場所さえ分からないという事態は、同国で野党政治家が直面する危険の大きさを改めて示している。アルジャジーラなどは、平和賞が国際社会による民主化支援の意思表示だと指摘する一方で、マドゥロ政権の弾圧は続いていると伝える。本人不在の可能性を抱えたノーベル賞イベントは、ベネズエラの人々にとって希望であると同時に、民主化が不安定で脆い基盤の上にあるかを思い起こさせる場にもなりそうだ。
参考・出典
- Nobel Peace Prize for 2025 – Nobel Peace Prize
- Nobel Institute calls off Machado press conference ahead of Peace Prize ceremony
- Oslo appearance by Nobel peace prize winner María Corina Machado cancelled
- Planned appearance by Venezuelan opposition leader called off on eve of Nobel Peace ceremony
- Who is Maria Corina Machado, 2025 winner of the Nobel Peace Prize?
