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ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領が、退陣と引き換えに安全な国外退去を模索していたことが明らかになった。11月21日に行われたトランプ米大統領との電話会談で、法的免責や制裁解除など一連の条件を提示したが、米側はこれを退け、家族と共に1週間以内に出国する場合だけ安全を保証すると伝えたという。期限はすでに切れ、米国はベネズエラ上空の空域閉鎖まで打ち出した。出口が細るなか、「マドゥロ政権の終わり方」と、そのコストを誰が負うのかが改めて問われている。
揺れる首都、行き場を失う権力と市民
ロイター通信などによれば、11月21日の電話でマドゥロ氏は、米国が安全を保証する形での退去を模索していたが、トランプ氏は多くの要求を拒んだとされる。通話は15分足らずで終わり、マドゥロ氏には「家族とともに1週間以内に好きな国へ出国するなら安全を約束する」とだけ告げられたという。猶予期限が過ぎても本人は首都カラカスで公の場に姿を見せており、亡命に踏み切れないまま包囲網だけが狭まっている格好だ。
長期の経済危機で、ベネズエラからはすでに数百万人が国外へ流出しているとされる。仕事や医薬品を求めて周辺国や北米に向かった人びとは、母国の指導者が去るのかと固唾をのんで見つめる一方、急な権力空白が治安悪化や報復の連鎖を招くのではないかという不安も抱えている。ワシントン・ポストは、亡命中の野党指導者らが米政府に対し、マドゥロ政権との「送還取引」が彼の求心力をかえって強めかねないと警鐘を鳴らしていると伝える。
国内に踏みとどまる市民にとっても、電話会談は「明日の暮らし」を左右しかねない出来事だ。マドゥロ氏が退く場合でも、制裁や刑事訴追が一夜にして消えるわけではなく、新政権がすぐ物資不足や治安を立て直せる保証もない。政権が残れば残るで、米国の圧力は強まり、石油産業を含む経済基盤がさらに損なわれるリスクがある。指導者個人の去就と同じかそれ以上に、「市民の安全と生活を誰がどのように引き受けるのか」が見えないままだ。
最大圧力を続けるトランプ政権の計算
今回の電話は、数カ月にわたる米国の「圧力キャンペーン」の延長線上にある。米軍はカリブ海で麻薬取引に関与したとされる船舶への攻撃を繰り返し、トランプ氏は陸上への作戦拡大にも言及した。ベネズエラ軍内部の一部高官を含む「太陽のカルテル」を外国テロ組織に指定し、先週末にはベネズエラ上空の空域を閉鎖する決定を示すなど、軍事・経済の両面から締めつけを強めている。
そのうえでマドゥロ氏は、電話の中で自分と家族、政権幹部100人超に対する法的免責と制裁の全面解除、国際刑事裁判所での訴追停止まで求めたとされる。米司法当局が麻薬取引などで起訴した相手に、ホワイトハウスが一方的に「お咎めなし」を約束することは、国内世論や法制度の面からも簡単ではない。トランプ氏が提示したのは、あくまで短期間の安全な退去のみであり、それ以上の譲歩を避けた背景には、対麻薬・対移民で強硬姿勢を示したいという米国内政治の計算も透けて見える。
トランプ政権は1期目から、政府資産の凍結や石油取引の制限など「最大圧力」路線をとってきた。いったんバイデン前政権が石油分野で一部緩和に踏み切ったが、今年2月、トランプ氏は改善が見られないとしてそれを打ち消している。制裁をテコに選挙制度や移民送還で譲歩を引き出す発想は、政権交代後も変わっていない。軍事力の誇示と制裁の強化、そして「退路」の限定提示という組み合わせは、マドゥロ氏だけでなく他の権威主義政権にもメッセージを送る狙いがあるとみられる。
残された出口と、問われる移行のコスト
一方のマドゥロ氏は、米国による制裁や刑事訴追を「政権転覆の口実」とみなし、退陣するとしても側近を含めた広範な免責と、与党側が主導する暫定政権の樹立を条件にしていると伝えられる。副大統領のロドリゲス氏が暫定政府を率い、新たな選挙まで軍や治安機関の実権を維持したいとの思惑も示したとされる。米側から見れば、支配構造を温存したまま「顔ぶれだけ変える」案に映りかねず、双方の要求は大きくかみ合っていない。
ベネズエラ政府は、米国の行動を一貫して「石油資源を奪うための干渉」と批判し、主権と平和的対話の必要性を強調している。空域閉鎖の決定に対しても「植民地主義的な脅しだ」と反発し、難民送還の受け入れ停止などで対抗した。近隣のコロンビアのペトロ大統領は、政府と反体制派の対話の場として自国の都市を提案しており、第三国を仲介にした政治解決の模索も続いている。
だが、亡命合意にせよ、国内での権力移行にせよ、その「出口」のコストは最終的にベネズエラ社会が負うことになる。軍や治安機関への保証、被害者のための司法手続き、制裁解除と経済再建の順番――どこにどれだけの代償を払うのかで、将来の安定度は大きく変わる。軍事的緊張が高まるほど、交渉による移行は難しくなるが、それでも持続的な解決は対話以外にないという冷厳な現実もある。指導者の去就をめぐる駆け引きの陰で、国外に散った人びとがいつ故郷に戻れるのかという、より静かな問いが重く横たわっている。
参考・出典
- Trump rejected Maduro requests on call, options narrow for Venezuela leader, sources say
- Options narrow for Maduro after call with Trump, sources say – The Japan Times
- Trump nixes Venezuelan oil concessions granted by predecessor Joe Biden | Donald Trump News | Al Jazeera
- Venezuela denounces 'colonialist threat' as Trump orders airspace closed
- Trump reportedly gave Maduro ultimatum to relinquish power in Venezuela
