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11日午前、警視庁の捜査員らがマニラへ向かった。8月の繁華街で日本人2人が射殺された事件の実行役が日本人から依頼を受けたと語る中、現地の防犯カメラ映像や携帯電話の解析で首謀者の特定を急ぐ狙いだ。滞在は14日までとされ、日比の捜査が実務段階に入った。
動き出した日本側の捜査
派遣の目的は、現場周辺の防犯カメラの時系列を洗い直し、拘束された実行役とされる男らの携帯電話を解析して、連絡網と移動経路を可視化することにある。現地警察の協力を受け、通信履歴や位置情報の保存状況を確認し、証拠の保全を進める。
事件では、被害者がタクシーを降りた直後に至近距離から撃たれている。映像の死角や光量の差は少なくないが、周辺の複数カメラを重ねることで、接近経路や待機場所を特定できる可能性がある。捜査員は現場の照度や交通の流れも合わせて検証する。
携帯電話の解析では、メッセージアプリの削除履歴やクラウドの自動バックアップ、端末間の共通アカウントなど、断片的な情報を寄せ集める作業が中心となる。端末が暗号化されていても、基地局ログやWi‑Fi接続履歴から周辺関係が浮かぶことがある。
見えてきた依頼型の構図
現地当局に拘束されたのはフィリピン人の兄弟で、当初の供述では日本人から指示を受け、報酬を約束されていたとされる。約900万ペソの見返りや前金の支払いに言及があり、計画性の高さをうかがわせる。依頼型の犯行という輪郭は、ここで一気に濃くなる。
撃たれたのは佐鳥秀明さん（当時53）と中山晃延さん（当時41）。8月15日、マニラの繁華街でタクシーから降りる際に襲われた。現地メディアが伝えた供述や防犯カメラの状況と合わせると、待ち伏せに近い形で、短時間に役割分担して実行された可能性が高い。
一方で、兄弟の供述の真偽や資金の出どころ、送金経路の裏付けはこれからだ。関係者の端末に残る通話記録や送金アプリの履歴、現金の受け渡しを示す写真データなど、直接証拠に当たる素材をどこまで押さえられるかが、構図の確度を左右する。
交差する捜査線とこれから
日本側は首謀者像の特定を主眼に置く。匿名で流動的に組織される「トクリュウ（匿名・流動型の犯罪グループ）」の関与が指摘されており、固定的な人間関係よりも、役割と口座、端末の使い回しに痕跡が残る。通信網と資金の流れを二重に追う必要がある。
現地に入った捜査員は、拘束中の2人が使っていた端末と、周辺で検出された未特定端末の関連性も検証する。犯行前後に同じ基地局を共有した端末、特定の決済アプリに同時ログインした形跡、位置情報が不自然に欠落した時間帯など、小さな矛盾を拾い上げる。
一連の作業は、日比の手続きや保全方法の違いを乗り越える綿密な共同で進む。派遣は14日までとされるが、取得データの照合やデジタル鑑識は帰国後も続く。欠けたピースを埋めるたび、人物相関と資金ルートが立体化し、全容に少しずつ輪郭が与えられていく。
路上の数秒と端末の断片が、遠く離れた机上で少しずつつながっていく。
