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湿った熱気が残る会場で、握手は短く、視線はまっすぐだった。小泉防衛大臣がニュージーランドのコリンズ国防相と初めて顔を合わせ、海上自衛隊の「もがみ型護衛艦」輸出に向けた協議を続ける方針を確認した。豪州が同型を次期フリゲートに選んだ流れを受け、太平洋の安全保障と日本の装備移転政策が静かに交差した場面である。
初会談が映した手応えと慎重さ
会談の舞台はクアラルンプールの国際会議。小泉大臣は拡大ASEAN国防相会議のため現地入りし、11月1日から2日にかけて各国要人と相次ぎ協議に臨んだ。現時点で確認されている範囲では、ニュージーランド側から「もがみ型」への関心が伝えられ、両国は輸出可能性を含む協議の継続で一致したとみられる。表情に緊張は残しつつも、やり取りには現実味が漂った。
日本側にとっては初の相手国となるわけではないが、海洋国家ニュージーランドの艦隊更新に日本の設計が候補として浮上する意義は小さくない。小泉大臣は装備品移転の拡大に意欲を示しており、今回の接点はその方針の延長線上にある。一方で、輸出は法制度や運用、保守の枠組みまでを伴う長丁場で、政治・財政の節目を幾つも越える必要がある点は変わらないと映る。
協議の具体像はこれからだ。搭載システムの仕様や建造スケジュール、費用分担、訓練・保守体制といった現実的な項目が並ぶはずで、段階ごとに双方の承認が要る。現時点で確認されている範囲では、両国とも「早期に結論ありき」ではなく、段階を踏む姿勢を崩していない。熱気の中に、慎重に歩を進める足取りが見えた。
豪州選定が後押しする「もがみ型」の存在感
今回の動きには前触れがある。2025年8月5日、豪州政府は海軍の新たなジェネラル・パーパス・フリゲートに日本の「もがみ型」を優先候補として選定した。入札過程を経ての決定で、最初の3隻は日本で建造し、2029年に初艦を引き渡し、2030年の運用化を見込む計画だ。太平洋の同盟国が日本設計を選んだ重みは、域内に波紋を広げている。
豪州の判断は即ちニュージーランドの選好を決めるものではないが、近接運用の観点からは相互運用性や保守の共通化といった利点が見えてくる。とりわけ、訓練、補給、部品の調達・修理網をどう合理化するかは小規模艦隊ほど死活的で、先行調達国の実績は重要な参照点となる。もがみ型の量産設計と省人化思想は、その議論を後押ししているとみられる。
他方で、豪州が想定する装備・仕様とニュージーランドの任務環境は異なる。排他的経済水域の監視、災害対応、南極海域の任務など、NZ固有の要件が艦の設計や装備の選択を左右する。豪州での装備構成がそのまま最適解とは限らず、設計のモジュール性や拡張余地、ライフサイクルコストの比較が鍵となる。選定プロセスは、地域の類似装備だからこそ丁寧さが問われる局面にある。
艦隊更新をめぐるNZの思惑と日本の装備移転
ニュージーランド政府は国際秩序の維持に資する防衛協力を掲げ、近年は装備投資の必要性を強調してきた。今回の会議でも、コリンズ国防相は各国との会談を重ねる姿勢を示し、地域の安全保障課題を共有する方針を述べている。国内では海軍の艦艇更新について政府内で検討が進むとされ、予算と任務の優先順位づけが同時に問われる段階に入ったといえる。
日本側の前提は明確だ。防衛装備移転は透明性の高い手続きを通じ、国際法と日本の法制度に基づいて進められる。輸出は目的外使用の防止、第三国移転の管理、保守支援の責任分担といった条項を伴い、政治的な継続性が試される領域でもある。日本企業にとっては、技術移転や現地産業との協業設計が契約の要諦となる可能性が高い。
小泉大臣は、もがみ型や潜水艦など日本の装備品に対する各国の関心に言及し、移転拡大への意欲をにじませたと伝えられる。会場を後にする両者の背中は静かだったが、太平洋の海図の上では新しい線が細く引かれた。線はすぐに実線にはならないだろう。だが、同じ海域を見つめる2つの目が交わったことの意味は、じわりと広がっている。
