NATO「足並み揃わず」　ウクライナ加盟の見通し再び後退

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2025.12.03

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北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長が2日、ウクライナの加盟を巡って「加盟国の足並みはまだそろっていない」と語った。激しい戦闘が続くなか、当面の加盟が難しい現実が改めて示された形だ。本稿では、加盟が遠のくように見える状況で、ウクライナの安全をどう確保しようとしているのかを追う。

加盟が見通せない中で、前線をどう守るのか

ルッテ事務総長は2日、ブリュッセルでの外相会合を前に記者団に対し、ウクライナのNATO加盟について「いま同盟内に一致した見解はない」と説明した。ロイター通信などによれば、戦争が続く国を直ちに同盟に迎え入れることへの慎重論が、一部加盟国の間で根強いという。

同時に事務総長は、加盟が実現しない場合でもウクライナを守る手段を各国と協議していると明かした。トルコの国営アナトリア通信によると、将来の停戦や和平合意には「ロシアが再侵攻するのを抑止する安全保障の保証」が欠かせないとの考えを示している。これは追加制裁や長期的な軍事支援など、政治・経済面を組み合わせた枠組みを指すとみられる。

前線では、こうした議論の行方が兵士や市民の生死に直結する。欧州各紙は、東部や南部でロシア軍の攻勢が続き、防空システムや砲弾の供給が途切れれば都市インフラが再び破壊されかねないと伝える。加盟の見通しが立たないなかでも、短期の兵站支援と長期の安全保障をどう組み合わせるかが、現場にとって最大の関心事になっている。

「原則」と「実務」のあいだで揺れる同盟

ルッテ氏は、ウクライナ加盟を巡っては「原則」と「実務」を切り分けるべきだとも述べている。インタファクス通信によれば、NATOの根拠となる1949年のワシントン条約は、価値観を共有し安全保障に貢献できる欧州の国に加盟の扉を開いているという原則を、いまも維持していると強調した。

一方で実務面では、加盟には32カ国すべての同意が必要という仕組みが重くのしかかる。欧州メディアの報道では、ロシアとの対立激化を懸念する中・東欧の一部や、アメリカの和平案との整合性を気にする国々が、タイミングや条件を巡って足並みをそろえきれていない。NATO拡大をめぐる米トランプ政権の案が「ウクライナの加盟凍結」を含んでいたと伝えられたことも、議論を複雑にしている。

それでも、ロシアの侵攻後に多くの加盟国が国防費の大幅増額に踏み切った事実は、同盟の基本方針が「ウクライナを見捨てない」方向にあることを示す。ルッテ氏は各紙の取材に対し、防衛力強化はウクライナ支援だけでなく、NATO全体の抑止力を高めることで戦争を広げないためでもあるとの認識を示している。

和平交渉と加盟問題、これからの分岐点

現在進む米ロ間の和平協議では、ウクライナのNATO加盟をどう扱うかが大きな争点になっている。Euronewsによれば、アメリカが提示したとされる案には「NATO拡大の停止」が含まれていたが、欧州側の反発を受けて修正が進んでいるとされる。ルッテ氏は、加盟問題はどんな和平合意とも切り離してNATO側で決めるべきだとの立場を示し、交渉材料にしない姿勢をにじませた。

また、アナトリア通信によると、ルッテ氏は2026年7月に予定されるトルコ・アンカラでの次回NATO首脳会議までに、停戦か完全な休戦の実現を望む考えも語った。ただ、たとえ銃声が止まっても、どの程度までロシア軍が撤退するのか、誰がどの規模の再建費と安全保障コストを負担するのかといった論点は残る。ウクライナにとっては、加盟の有無だけでなく、その後数十年の安全保障設計が問われる。

一方、ウクライナ側はNATO加盟の権利そのものを手放す考えはないと繰り返している。ウクライナメディアは、同国の外相が「ロシアの要求する『NATOに入らない約束』は受け入れられない」と主張したと伝えた。加盟への扉を残しながら、当面は二国間・多国間の安全保障協定や軍事支援でどこまで穴を埋められるのか。NATOとウクライナ双方にとって、いま進む協議は次の安全保障秩序の形を決める分岐点となりつつある。

加盟が見通せない中で、前線をどう守るのか

「原則」と「実務」のあいだで揺れる同盟

和平交渉と加盟問題、これからの分岐点

参考・出典