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中国外務省の会見場で、記者の質問に応じたのは毛寧報道局長だった。2025年11月17日、南アフリカで開かれる主要20か国・地域首脳会議での予定について問われると、毛氏は李強首相と高市早苗首相の会談は組まれていないと淡々と語った。台湾有事を巡る高市氏の国会答弁への反発を背景に、日中の間で続いてきた緊張が、国際会議の場にも影を落としつつある。
中国外務省がG20での首脳会談見送りを明言し、距離の広がりを示す
毛寧報道局長は会見で、11月22〜23日に南アフリカのヨハネスブルクで開かれる見通しの主要20か国・地域首脳会議に関連し、李強首相と高市早苗首相の会談は「予定されていない」と説明した。各国首脳が一堂に会する場で、隣国同士のトップ会談が見送られるのは、両国関係の冷え込みを象徴する出来事と受け止められている。
本来、首脳会議の場では、正式な会談だけでなく、短時間の立ち話も含めて信頼回復の糸口が模索されることが多い。今回は中国側が、あらかじめ「会談なし」の姿勢を公にした形だ。こうした事前のメッセージは、相手国に不満や警戒感を伝える外交上のシグナルとして使われることがあり、日中の対話が今後も細りかねないとの見方が出ている。
そもそも主要20か国・地域の枠組みは、世界経済や金融の安定を図るために各国首脳が集まる場として設けられた。経済協力や地球規模課題の調整を進めるためには、たとえ対立があっても対話を重ねることが重要だとされる。今回、アジアで大きな比重を占める2か国が、最高レベルの対話を見送る方向にあることは、議論の幅にも少なからぬ影響を与えそうだ。
台湾有事発言への強い反発が、ハイレベル対話に影を落とす
会談見送りの背景には、高市首相による台湾有事に関する国会答弁がある。首相は、台湾を巡る武力紛争が起きた場合、日本が集団的自衛権を行使する前提となる存立危機事態になり得るとの認識を示した。台湾有事というのは、台湾周辺で重大な軍事的緊張や武力衝突が生じる事態を指す言葉で、中国側は主権問題そのものに関わる非常に敏感なテーマと位置づけている。
この発言に対し、中国外務省は連日のように会見で批判を繰り返している。別の報道官は、発言を「内政干渉」だと非難し、撤回を求める立場を明確にしてきた。毛氏も、日本政府が「台湾を巡る基本的立場は変わっていない」と説明していることについて、首相の答弁が両国関係の政治的土台を傷つけたと主張し、高いトーンの批判を崩していない。
一方、日本側は、あくまで現行の安全保障法制に基づく一般的な説明だったとの立場を示し、従来の台湾政策に変更はないと説明している。両国の主張はかみ合わないままで、高市氏の言葉をきっかけに積み上がった不信感が、首脳会談の見送りという形で表面化した格好だ。多国間の場で対話のチャンスが失われれば、誤解を解く機会も減り、政治・安全保障だけでなく経済分野にもじわりと影響が及ぶおそれがある。
今回の決定が一時的な陣痛なのか、長く続く冷却の入り口なのかはまだ見えていない。ただ、対立が際立つ局面だからこそ、実務レベルでの意思疎通や、多国間の枠組みを通じた小さな対話の積み重ねが、後になって振り返れば貴重なつなぎ目だったと評価されることも少なくない。首脳同士が顔を合わせないままの会期が過ぎた後、両国がどのような手段で関係の軌道を探り直すのかが問われている。
