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大阪市平野区で不動産会社を営む台湾出身の女性（61）が、不法残留のベトナム人に部屋を貸した疑いで書類送検された。捜査関係者への取材で2025年11月12日に判明した。貸し手と働き手、住まいと仕事が交錯する現場で、取り締まりは住居の出入りから雇用の実態まで細く長い線をたどり始めている。
貸し出しの経緯と女性の主張
容疑は、平野区のマンションの一室などを不法残留中のベトナム人2人に貸したというものだ。女性は「不法残留とは知らなかった」と否認している。入居の経路や本人確認の手順、家賃の受け渡し方法など、住まいの入口で何が確かめられていたのかが、捜査の焦点になっている。
入居者の1人が「ゴミ回収の仕事をしていた」と説明したことから、警察は内偵を開始した。調べは住居の契約関係から雇用実態へと広がり、八尾市内のゴミ収集会社で別のベトナム人が働いていたことが浮かんだ。住まいの鍵から職場の車庫まで、捜査線は日常の動線をなぞるように延びていった。
不法残留（在留期限を超えて滞在すること）は出入国在留管理庁の管轄で、これを助ける行為は不法残留ほう助（入管法違反を手助けする行為）とされる。雇用面では、不法就労助長（許可のない就労をさせる行為）が問われうる。今回のケースは、住まいの提供と就労の場が近接することで、複数の容疑が並走する形になっている。
広がった捜査の先に
警察は、八尾市内のゴミ収集会社でベトナム人を不法就労させていたとして、すでに男3人を逮捕している。住まいの提供という静かな入り口から踏み込んだ調べが、現場の作業服や業務連絡の記録に及び、労働の実態へとつながった格好だ。住む場所と働く場所、その両輪が合わさると、実態の全体像が見えやすくなる。
地域では、似た構図の摘発も報じられてきた。2025年9月1日18:44には、読売テレビが就労資格のないベトナム人3人を働かせた疑いで、派遣会社側の経営者ら3人が逮捕されたと伝えている。場所は同じ八尾市内の廃棄物収集現場で、雇用の入口での確認不足が、現場の慣行と絡み合う様が浮かぶ。
貸し手が入居を認め、紹介者が仕事をつなぎ、現場が受け入れる。細かな判断の積み重ねが、不法な滞在と就労の温床になりうる。逆にいえば、どこか一つでも適切な確認が働けば、流れは止まる。捜査が住居と雇用の双方を追うのは、その連鎖のどこで歯止めが利くのかを見極めるためでもある。
入管法のポイント
不法残留は、在留カードに記された期限を超えて日本にとどまる状態を指す。入国時の資格と就労の可否はカード面に反映され、在留期限や活動範囲が明記されている。雇用の場では、在留カードの有効性や就労の可否を確認することが基本となり、書類の原本確認や記録保存が、後のトラブルを避ける初歩の対策になる。
住居の提供は、直ちに違法と決まるわけではないが、相手の地位を把握しながら継続的に便宜を図れば、不法残留ほう助に問われる可能性が生じる。募集時の説明、本人確認の方法、入居後の連絡の取り方など、賃貸の運用実務に落とし込む視点が要る。日常の手順を整えることが、結果として自らを守ることにつながる。
今回の送検は、住居と雇用の二つの入口で起きたほころびが、同じ線上に並んだことを示す事例だ。捜査は引き続き契約の流れや関係者の役割を洗い直す。地域の受け皿として機能してきた現場ほど、仕組みの見直しが進むはずだ。小さな歯止めが増えれば、不適正な流れは自然と細くなる。
