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会議室に集まった担当者たちが、テーブルに並んだ資料の数字を追っていた。2025年11月26日、日本政府は、価格が1万円以下の少額輸入品でも海外ECサイト側に消費税の納税義務を負わせる方向で調整に入った。長く指摘されてきた国内外事業者の「税負担の差」を埋めるかどうか、越境ECの行方を左右する局面に入っている。
少額輸入品の免税制度はなぜ見直されるのか
現在、日本では海外から個人が取り寄せる少額輸入品のうち、課税価格が1万円以下の貨物については、関税と消費税が原則として免除されている。通関の事務負担を減らすために設けられた仕組みで、インターネット通販が広がる前から続く制度である。一方で、国内の店舗や国内倉庫から商品を出荷する事業者は同じ価格帯の商品でも消費税を納めており、販売価格にその分を上乗せせざるを得ない構図になっている。
政府が検討しているのは、海外から直接送られる1万円以下の小さな荷物についても、一定規模以上の海外EC事業者に日本の消費税を申告・納付させる仕組みである。消費者が荷物の受け取り時に税金を支払うのではなく、購入時点で価格に税を含め、事業者がまとめて納める形が想定されている。こうした方向性は、年末に向けて議論される税制改正の中で、国内外の事業者にとって「同じ土俵」での競争条件を整える狙いを持つ。
急増する越境ECと国内事業者の危機感
ここ数年、海外通販を通じた少額貨物の流入は急激に増えている。財務当局のデータでは、免税対象となる小口の荷物は過去5年間で5倍以上に膨らみ、2024年には約1億7千万件に達したとされる。安価なアパレルや雑貨などが、中国をはじめとする海外の倉庫から個人宛てに直接送られ、国内の物流網を大量の小包が行き交う光景が日常のものになった。
こうした動きに対し、国内の小売業や国内EC事業者からは「税を負担している側が価格競争で不利になる」との声が強まってきた。経済産業省も税制改正の要望書で、越境ECにおける少額輸入貨物の優遇が競争上の不均衡を生んでいると明記し、見直しを求めている。免税という本来は事務負担軽減のための枠組みが、結果として海外からの低価格商品に追い風となり、国内投資や雇用の足かせになりかねないとの懸念が共有されつつある。
豪州方式が示す「事業者課税」への転換
政府の税制調査会では、少額輸入品への対応として「豪州方式」と呼ばれる仕組みがたびたび取り上げられている。これはオーストラリアで導入されているモデルで、国境を越えて商品を販売する海外EC事業者に対し、売上規模が一定額を超えた段階で現地の消費税に相当する税を登録・納付させるものだ。日本でも、同様に越境ECを担う事業者側に責任を持たせるべきだという意見が専門家会合で多数を占めたと報じられている。
今後、日本が海外EC事業者への納税義務付けに踏み出せば、消費者は購入画面の表示価格にあらかじめ税が含まれるようになり、受け取り時の思わぬ請求や税関での足止めは減るとみられる。その一方で、免税によって維持されてきた低価格は修正を迫られ、値付けの差はやや縮まる可能性がある。少額の荷物が行き交う静かなネット通販の裏で、税のあり方を巡るルール作りが粘り強く進んでいる。
