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政府・与党が、高校生世代を養う親の所得税・住民税の扶養控除を小さくする案を、来年度の税制改正に向けて議論している。控除額を所得税で38万円から25万円、住民税で33万円から12万円へ見直す方向で、児童手当の拡充や高校授業料の実質無償化とどう釣り合わせるかが焦点だ。子育て世帯の負担は本当に軽くなるのか――その問いに沿って制度の再設計を追う。
家計から見る扶養控除縮小案
いま高校生の子を持つ親は、1人あたり所得税で38万円、住民税で33万円を課税所得から差し引くことができる。税率の高い層ほど減税額が大きくなる仕組みで、同じ高校生を育てていても高所得世帯の方が恩恵を受けやすいとの指摘が以前からあった。控除を減らしつつ児童手当で補う今回の見直しは、そうした偏りをどこまで和らげられるかが鍵となる。
一方で、控除額の縮小は給与から天引きされる税額の増加としてすぐに表れる。財務省案では、高校生1人あたり所得税控除を25万円、住民税を12万円まで戻すことで、かつて高校実質無償化に合わせて廃止された上乗せ部分を復元する形だ。児童手当の拡充で年間の手取りは増えるとの試算も公表されているが、世帯年収や子どもの人数によって増減の幅は異なり、家計の実感との差も生じかねないうえ、具体的な適用時期や最終案はなお検討中だ。
なぜ今か 児童手当拡充とのバランス
背景には、子育て支援策どうしの重なり方がある。児童手当は2024年10月分から支給対象が高校生年代まで広がり、これまであった所得制限も撤廃された。さらに2026年度からは、公立に加え私立も含めた高校授業料の実質無償化が予定されており、親の所得にかかわらず学費負担が大きく減る見通しだ。税控除を含めた支援の組み合わせを見直すことで、高所得者だけが過度に得をしない制度に近づけたいという思惑がにじむ。
高校生世代の扶養控除を巡っては、これまでも縮小案と反発が繰り返され、与党内での調整はたびたび難航してきた。今回も「増税と受け止められる」との懸念や、教育費がかさむ時期に控除を減らすことへの不安は根強い。ただ、少子化対策の財源をどこから捻出するのか、所得に応じた負担をどのように分かち合うのかという論点からは逃れられない。控除と手当、授業料無償化をどう組み合わせるかが、子育て世帯にとって納得度の高い仕組みとなるかを左右しそうだ。
とはいえ、こうした制度設計の裏側で問われるべきは、財源不足を理由に新たな負担を生み出す手法が、本当に持続可能な道なのかという点だ。目先の辻褄合わせで財源を造成し続ければ、結局は過去に繰り返してきた“場当たり的な政策”の焼き直しになりかねない。今こそ、同じ誤りを重ねないための本質的な議論が求められているのではないか。
