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連邦保安官が法廷前の廊下で5人を引き立てた。米司法省は2025年11月5日、ドイツ主導の国際共同捜査に合わせ、決済事業者を悪用した大規模なオンライン詐欺と資金洗浄の容疑で米国籍4人とカナダ国籍1人を逮捕したと発表した。身柄はカリフォルニア州中部で確保され、最終的にドイツへ引き渡す方針だという。操作は欧米とアジアの当局が足並みをそろえて進め、潜っていた「小さな引き落とし」の連鎖に目を届かせた格好だ。
米独の同時進行で、偽サブスクの流れをせき止める
米側の発表によれば、拘束は同日に行われ、容疑者らは初公判に向けた手続きに入った。独側は2025年11月4日に一斉措置を敢行し、複数の国で家宅捜索と逮捕を進めた。独検察と連邦刑事庁は、容疑者44人を柱とする組織的な詐欺と資金洗浄の枠組みを追ってきたとし、今回の一斉行動で18人を拘束したと明らかにした。操作は2020年から積み上げてきた分析に基づくと説明している。
独当局は、被疑者らが2016年から2021年にかけて、偽装した有料サイトで定期契約を装い、世界各地の利用者のカードから月々の少額を引き落としていたとみる。巧妙さの核心は金額にあり、1件あたりを50ユーロ未満に抑え、用途を読み取りにくい表記にすることで、気づきにくくしたとされる。蓄積した取引は決済事業者の網をくぐるように処理され、架空のサービスに現実の資金が流れ込んだ。
被害の広がりは一瞥では捉えにくい。カード情報は約430万人分が不正利用の標的となり、損失は3億ユーロ超に達したとされる。独側は国内外で資産の差し押さえも進め、うち数千万ユーロ規模を確保した。米側は、こうした連鎖が国内の決済網の一部を侵食し、「影の金融システム」を形づくる一因になったと指摘する。数字が示すのは、見えにくい場所で静かに続いた流出の重さである。
仕組まれた少額決済、決済事業者の内部も狙う
当局の説明では、詐欺サイトは映像配信や出会い系などの外観をまといながら、実際には課金以外の役割を持たない「入れ物」だった。アクセスは直接のリンクに限定され、検索からは見つけにくい。そこへ流れ込む課金は、名義上の加盟店やシェル企業を経て分散され、換金や送金で痕跡が薄められた。少額であり続けることが防壁となり、利用者の認知と監視システムの閾値を同時にすり抜けた。
独側は、国内の大手決済事業者の仕組みが一部で「妨害」され、内部にいた関係者の関与が疑われると述べる。ある事業者では資金洗浄を目的とした独自ソフトが実装され、通常の審査や不正検知の目を鈍らせた可能性があるという。決済の入口と出口の両側を押さえることで、月次の小さな流れを大きな収益に変える。金融の配管に手を入れるような手口で、外側からは異常の輪郭が見えにくかった。
流れた資金は多数の口座を経て回り、送金の鎖は長く編まれた。独当局は、未遂を含めればさらに大きな規模に達したとし、検知や拒否で実現しなかった取引も相当数に上るとみる。資金の“通い路”を遡るため、金融情報機関が蓄積した疑わしい取引の報告が手がかりとなり、監督当局の業務停止や取引制限の措置と噛み合って、流れの勢いは2021年以降、次第に弱まっていった。
法廷と監督の交差点、捜査は次の局面へ
米国で身柄を確保された5人は、現地の法廷で手続きを経て、独側の訴追に向けた引き渡しが調整される。米司法省は、国際捜査共助の枠組みの下で所在地の特定から逮捕までを支援し、中央当局が独検察と要件の擦り合わせを重ねたと説明した。国境をまたぐ事件で重要な、時間軸の揃った一斉作戦が奏功し、別々の制度と裁判所が同じ事実の核を支える形になっている。
独側では、押収資産の保全と証拠解析が続く。捜査線上には、詐欺ネットワークの運営者に加え、決済事業者の元従業員や仲介役、犯罪サービスの提供者、外部のリスク管理担当者らが含まれるとされる。役割は多層で、虚偽の加盟店をつくる者、課金サイトを保守する者、与信や不正検知の抜け道を知る者が、細い管を束ねるように連なっていた。全体像の確定には、なお時間がかかるだろう。
静かな引き落としは、明るい画面の背後で長く続いていた。今回の一斉摘発で流れは細り、各所に残った痕跡がつながり始めている。カード明細の1行に宿る違和感と、監督当局の重い一手、その間に横たわる距離は小さくない。それでも、配管の詰まりを一つずつ外す作業が、見えない漏れを止めていくはずだ。
