本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]
委員の呼びかけに合わせ、首相がマイクに口を寄せた。2025年11月13日の参院予算委総括質疑2日目。高市早苗首相は、自民と日本維新の会が合意した企業・団体献金の見直しについて「いまは工程を明示できない」と述べ、定数1割削減は「納得感の得られる規模」と強調した。安全保障や賃上げまで論点は広がり、与野党の間合いがにじんだ場面だった。
企業献金と定数削減、首相の言葉の温度差
首相は企業・団体献金の見直しで「現時点でスケジュールの明示は困難」と応じた。企業・団体献金とは、企業や業界団体が政党や政治家に資金を提供する仕組みのことだ。政治活動の自由に関わると位置づけ、性急な線表づくりを避けた格好である。いっぽうで議論は「できるだけ早急に進める」として、遅らせる意思はないともにじませた。
発言の背景には、合意の具体化が進むほど利害の調整が難しくなる現実がある。首相は自民総裁としての任期の枠に言及しつつも、「任期いっぱいかかるかは分からない」と含みを残した。工程表の提示は避け、原則と方向性を先に示す。支持基盤や連立の力学を踏まえた、慎重さと前進意思のせめぎ合いがうかがえる。
定数1割削減は維新側の強い要求として明かされ、「納得感の得られる規模」と評価した。一方で、質問に立った公明の議員は「1割の根拠がない」と批判した。数の目標は分かりやすいが、区割りや代表性の議論は複雑だ。自民と維新の距離感が可視化されるほど、他の野党は論点の穴を突き、攻防の重心は「何を、いつ決めるか」に移っていく。
安全保障の論点、透明性の回路を探る
質疑は安全保障にも広がった。野党側からは「スパイ防止法」の速やかな制定が求められた。ここでいうスパイ防止法は、国家の機密情報の不正取得などを処罰する国内法の総称だ。首相は、外国勢力の影響活動を透明化する「外国代理人の登録制度」を含め、必要な対応を検討したいと述べた。国内外の制度を参照しつつ、実効性と自由の両立を探る構えだ。
もっとも、透明性を高める制度は、対象の定義や運用の線引きが焦点になる。過度に広ければ表現や取材の自由を損ない、狭すぎれば抜け穴が生じる。首相が「慎重な議論」を繰り返すのは、このバランスの難しさを踏まえるからだろう。制度設計の解像度を上げるには、公安や外交の現場、民間の情報管理の実態まで視野に入れた検討が欠かせない。
外交面では、前政権が打ち出した東京と平壌の連絡事務所構想に否定的な見解を示し、「懸念の声が非常に大きい」と述べた。緊張緩和の回路をつくる発想自体は一定の合理性を持つが、国内世論や拉致問題への配慮が重くのしかかる。安全保障の回路を増やす議論と、国民の理解を得る説明責任。その二つを同時に満たす難題が浮き彫りになった。
賃上げと市場、足元に置いた経済メッセージ
首相は持続的な賃上げに向け、中小企業や小規模事業者を「強力に後押しする」と述べた。物価上昇が長引く局面で、価格転嫁や人材確保に弱い層への支援は賃上げのボトルネックを外す鍵になる。賃上げ税制や取引適正化の実効性が問われる段階に入り、補助から規律までをどう組み合わせるかが、来年度予算の骨格に直結する。
財政をめぐっては、財務相が日本国債の債務不履行は「通常考えにくい」との認識を示した。国債の多くが円建てで、国内投資家が保有しているという構造的な強みを踏まえた説明だ。デフォルト(債務を約定どおり支払えない事態)への過度な懸念を鎮めつつ、金利や為替の変動に目配りする姿勢をにじませた格好である。市場の不安を抑える発信でもあった。
一方で、政治コミュニケーションの作法をめぐる論争も持ち込まれた。政党幹部がSNSに記者の名刺画像を掲載した件に関し、委員から「許されるのか」とただされたが、首相は「個別の事柄へのコメントは差し控える」と述べるにとどめた。個人情報と報道の信頼関係に関わる問題が国会に波及し、政策と倫理が交差する風景が露わになった。
結局、この日の委員会は、工程を定める難しさと、急ぐべき課題の双方を映した。答弁の抑揚の差が、政治の現在地を物語っている。