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環境省が、国の機関が購入する電力の選び方を大きく変えようとしている。政府が契約する電気について、法令順守に問題のある再生可能エネルギー発電所から電気を仕入れる事業者は入札に参加できなくする方向で、具体的な制度設計の検討に入った。価格だけでなく、二酸化炭素排出量の少なさや地域との共生状況といった「質」も点数化して評価する構想で、2026年3月の閣議決定を目指す。公共調達で再エネの質と違反をどう見極めるのかが、今後の焦点となる。
地域トラブルが突きつけた、「安い再エネ」の影
大規模太陽光発電所、いわゆるメガソーラーは、山林の大規模伐採や土砂流出、景観悪化などを巡って各地で住民との対立を招いてきた。事業計画が土地利用規制や環境関連の条例と噛み合わず、行政から是正指導を受ける案件も少なくない。それでも一度稼働すると、発電した電気は送電網に流れ込み、政府機関を含む需要家からは、どのような経緯で造られた設備か見えにくい。
こうした状況を受け、経済産業省は固定価格買取制度(FIT)やフィードインプレミアム(FIP)の対象となる再エネ発電事業の「不適切案件」について、市民や自治体からの情報提供を受け付ける専用窓口を設けている。法令違反や安全面への懸念がある発電所について通報が寄せられれば、関係機関と連携して実態把握や指導を行う仕組みだ。
一方で、電力を購入する側である政府機関の入札は、これまで主に価格を中心に決まってきた。例えば環境省東北地方環境事務所が実施する低圧電力の調達では、予定使用量に基づいて算出した年間総額の最安値を落札者とする方式が採られている。どれだけ環境に配慮した電源か、地域の合意を得ているかといった要素は、入札条件の外側に置かれがちだった。
環境省が今回踏み込むのは、この「見えない部分」を公共調達の物差しの中に持ち込むことだ。法令違反が確認されたメガソーラーなどから電気を仕入れている小売電気事業者は、国の電力入札に参加できない方向で基準を設けることで、違反行為そのものに経済的なペナルティを与える狙いがある。価格を競う市場の中に、地域との関係やルール遵守といった社会的コストを織り込もうという試みともいえる。
価格一辺倒から総合評価へ 入札ルールはどう変わるか
国の機関による電力契約は、「環境配慮契約法」に基づき、従来から再エネ導入状況などを加味して選ぶ建て付けになっている。環境省のQ&Aでは、再エネ電気の比率や未利用エネルギーの活用状況を評価項目として示し、前年度の供給電力量に対する再エネ比率の算定方法などを細かく定めている。ただ実務の入札では、環境性能の基準を満たしたうえでの「最安値」が重視されるケースが多かった。
こうした中、政府は再エネ電力の調達を拡大するため、価格と環境性能の両方を点数化して落札者を決める「総合評価落札方式」を、本格的に取り入れる方針を示している。IT専門メディア「スマートジャパン」によれば、各府省庁が調達する電力のうち、2030年度までに60%以上を再エネとする目標とセットで、この方式の導入が検討されているという。
環境省が今回検討している見直しは、この総合評価の枠組みに「法令順守」と「再エネの質」をより強く反映させるものだ。具体的には、森林法や土砂災害防止法など関係法令に違反した再エネ発電所から調達した電気を扱う事業者を、入札から外す仕組みを想定している。違反が疑われる案件については、先の情報提供制度や自治体からの通報などを手がかりに、関係省庁が連携して確認する形が考えられる。
さらに、温室効果ガス排出量の少なさや、地元との協定締結など共生の取り組み状況を加点要素とする案もある。これまでも再エネ比率という量的な指標は評価されてきたが、今後は発電所ごとの排出原単位や運営の仕方といった「質」の違いが、国の入札結果に直接反映される可能性が高まる。環境省は2026年3月までの閣議決定を目標にしており、制度が実現すれば、国の電力調達は価格中心から多面的な評価軸へと舵を切ることになる。
事業者・自治体に広がる波紋と、残された問い
公共調達のルールが変われば、再エネ事業者の事業計画にも影響は避けられない。とりわけ、地形の急な土地や森林地帯でのメガソーラー開発では、法令や条例の解釈を巡って行政との綱引きが生じやすい。これまでは、最終的に指導や罰則を受けても、発電所が稼働してさえいれば電力の売り先を失うとは限らなかったが、今後は国向けの販売機会が閉ざされるリスクを織り込む必要が出てくる。
資金を供給する金融機関にとっても、法令違反による「入札排除リスク」は新たなチェックポイントになりうる。再エネ関連の費用負担調整業務や入札業務を担う機関として、電力広域的運営推進機関が位置づけられていることからも、国が市場全体の運営に深く関与していることは明らかだ。開発段階からルール遵守を徹底するプロジェクトほど、資金調達面で有利になる構図も見えてくる。
自治体や住民の側から見れば、公共調達の基準が後ろ盾となり、懸念の大きい計画に対して「このままでは国への電力販売が難しくなる」と説得材料に使える可能性がある。その一方で、基準が厳しすぎれば、そもそも応札できる事業者が減り、国の電気料金負担が増えかねないとの懸念もある。特に、地方の小規模事業者にとっては、煩雑な証明や書類作成の負担が重くのしかかる恐れがある。
再エネを主力電源に位置づける流れの中で、環境省が打ち出す新たな入札ルールは、単に「良い発電所だけを選ぶ」仕組みにとどまらない。法令違反を抑止しつつ、コストを抑え、地域の合意形成をどう支えるのか。そのバランスをどこに置くかという難しい問いを、公共調達という具体的な場で突きつける一歩となるだろう。
