ロシアがドネツク州シベルスク制圧を宣言　ウクライナ軍は掌握否定

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2025.12.12

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ロシアのプーチン大統領は2025年12月11日、ウクライナ東部ドネツク州シベルスクをロシア軍が「完全制圧した」とする報告を司令官から受け、前線部隊に謝意を示した。だがウクライナ軍は、都市は依然として自軍が掌握しており激しい戦闘が続いていると反論し、実際の支配状況はなお不透明なままだ。

前線小都市をめぐる攻防

シベルスクは、戦闘が続くドネツク州北部に位置し、開戦前は1万人超が暮らす小都市だった。周辺ではロシア軍が村落を次々と占拠してきたとされ、砲撃や無人機攻撃が日常化するなか、残る市民は数百人規模まで減ったとウクライナ側は説明してきた。

英ロイター通信などの報道によれば、ロシア軍は司令官の説明として、ウクライナ軍の補給路を断ち、塹壕や防御陣地を側面から迂回する形で部隊を前進させたと強調している。シベルスク攻略を、依然としてウクライナが守る要衝スラビャンスクへ進むための足掛かりだと位置付け、軍事的な節目として国内外にアピールする狙いもにじむ。

一方で、ウクライナ軍や現地軍事行政は、都市内部への侵入は受けているものの、防衛線は維持していると主張してきた。市内や周辺では連日のように砲撃と空爆が報告され、限られた退避ルートを通じて高齢者らの避難が続くなど、市民生活はすでにほとんど成り立たない状態だ。それでも「完全制圧」は認めないという姿勢が、前線の粘りを象徴している。

食い違う発表が示す情報戦の最前線

シベルスクをめぐる評価の食い違いは、戦場での支配権が一夜で白黒つかない現状を映している。ロシア側は町全体を掌握したと発表する一方、米シンクタンク「戦争研究所（ISW）」などは、ロシア軍が東部を中心に大半を支配している可能性を認めつつ、西部地区ではなお激しい戦闘が続き、完全制圧とは断定できないと分析している。

ウクライナ軍の作戦担当者は、ロシア軍が小規模部隊で天候の隙を突きながら浸透し、市内各所で国旗を掲げる様子を撮影して戦果として喧伝していると指摘する。こうした「旗立て作戦」は、実際の占領範囲以上に前進を誇示する狙いがあるとの見方が、欧米メディアや専門家の間でも共有されつつある。

ドネツク州全域の制圧を目指すロシアにとって、シベルスクの行方は今後の和平交渉や停戦ラインの議論にも影を落としうる。一方のウクライナは、小都市であっても防衛継続を示すことで、領土保全を譲らない姿勢を国内外に訴えようとしている。どちらの発表が歴史に残る事実となるのかは、なお前線の戦況に委ねられている。