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乾いた風が吹くラファの砂塵の向こうで、人の列がいつ動き出すのかを見つめる視線が重なる。イスラエル軍は10月16日、ガザとエジプトの境界にあるラファ検問所について、パレスチナ人の通行再開に向けてエジプトと調整中だと表明した。ただ停戦合意違反を巡る応酬が続く中、具体的な日程は示さず、情勢の脆さが浮かぶ。
ラファ再開を巡る駆け引き
イスラエル軍は16日、ラファ検問所の再開に向け、パレスチナ人の通行を対象とした調整をエジプト側と進めていると明らかにした。現時点で確認されている範囲では、検問所の運用形態や優先順位は確定していない。イスラエル側は、停戦合意の履行を強調しつつも、実務面での安全管理や連携手順を詰める必要があるとみられる。
一方で、イタリアの通信社は同日、イスラエルのギデオン・サール外相がラファ再開の見通しを10月19日と述べたと伝えた。ナポリで開かれる地中海地域の会議の場で「必要な準備は整っている」と語ったとされるが、開放が人道支援物資の通過を意味するのか、一般市民の往来なのかは言及がない。現地の空気は、約束の言葉よりも具体の通達を待つ緊張で張りつめている。
停戦違反をめぐる応酬
停戦の実施段階に入ったとされる中でも、現場の静けさは長く続かない。イスラム組織ハマスの幹部は16日、イスラエルが10日以降の銃撃で少なくとも24人を殺害したと非難し、違反行為のリストを仲介者に提出したと述べた。これに対しイスラエル側は即応コメントを出していないが、過去には「停戦拠点に近づくなという警告が無視され、脅威排除のため発砲した」と説明している。
援助の流れを担うイスラエル軍の援助調整機関COGATは、人道支援物資の搬入は引き続きケレムシャローム検問所などイスラエル側のルートを通じて行われていると強調し、「人道支援がラファ検問所を通過することはない」との立場を示した。ラファの役割が人の往来に限られるのか、あるいは将来的に物資輸送へ広がるのかは、依然として確定していないと映る。
人質の遺体返還と揺らぐ信頼
停戦の第1段階に足を踏み入れたとされる和平プロセスは、冒頭から重い課題に直面している。イスラエル政府報道官は合意順守を強調しつつ、返還されていない19人の人質の遺体の引き渡しをハマスに要求した。イスラエル側は「死亡した人質28人全員の遺体を返す義務がある」と迫り、ハマスは10人の遺体を引き渡したと主張。しかしイスラエルは、そのうち1体は人質ではないと指摘している。
ハマスは、攻撃で瓦礫の山となった地域でさらなる遺体を収容するには、封鎖区域に重機を持ち込む必要があると訴える。ガザの保健当局は16日、紛争中に殺害されたパレスチナ人30人の遺体が返還され、13日以降の引き渡し数は120体に達したと明らかにした。数字が積み上がるほど、停戦の実像と現場の体感の差が広がっているように映る。
復興の座標を探して
統治と復興の設計図づくりも動き始めた。パレスチナ自治政府のムスタファ首相は16日、国際機関やパートナーと連携し、安全保障、物流、財政、統治の課題に取り組む考えを示した。エジプトで予定されるガザ復興会議では、援助資金の調整方法、受け手、配分の仕組みを明確化する必要があると指摘し、資金の流れを可視化する姿勢を打ち出した。
ラファが開けば人の流れが変わり、復旧の歯車も回り始める。しかし、停戦違反の応酬と人質問題がくすぶれば、境界のゲートは容易に重くなる。現時点で確認されている範囲では、19日の再開見通しとされる日付も、最後は現地の安全確保と当事者の合意履行にかかる。砂塵の向こうに見える列が動き出すには、言葉を現場の静けさに変える具体策が要る。
