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新製品の写真がモニターに映し出されると、ルネサスエレクトロニクスの担当者が「次のデータセンター時代を支える石です」と静かに切り出した。サーバー向けDDR5メモリ用の半導体「RRG5006x」は、AI処理で膨れあがるデータをさばくために生まれた部品だ。すでにサムスン電子へのサンプル出荷が始まり、データセンター事業者の目線は、数年先の本格導入に向かい始めている。
9600MT/sの新RCD、CPUとメモリの隙間を埋める
RRG5006xは、DDR5サーバーメモリに載る「レジスタードクロックドライバ(RCD)」と呼ばれる制御用チップである。DDR5はサーバー向けの最新DRAM規格で、その信号の元締め役を担うのがRCDだ。新製品は第6世代品として、1秒間に9600メガトランスファー(MT/s)、すなわち約96億回のデータ転送に対応し、前世代の第5世代品(8800MT/s)から帯域を約10%押し上げた。高速化が進むCPUやGPUに比べ遅れがちだったメモリ側の能力を引き上げ、全体のバランスを整える狙いがある。
RCDは、メモリモジュール上でCPU・GPUとDRAMチップのあいだに入り、コマンドやアドレス、クロック信号のタイミングを整える部品だ。ここでの信号品質や遅延が改善されれば、プロセッサーがメモリに書き込む実効速度も底上げされる。新RCDは信号経路のイコライゼーション機能を強化し、過去8回分の信号履歴を活用して1.5mV刻みで補正できる構造を採ることで、超高速動作時でも誤りを抑えつつ安定動作を図る。AIサーバーのように大量の学習データを扱う現場ほど、この細かな改良の恩恵は大きい。
サムスンと連携し、2027年量産へ
RRG5006xは、次世代サーバープラットフォーム向けに設計されつつ、第5世代DDR5 RCDとの下位互換性も確保している。既存システムと完全に切り替えるのではなく、一部のメモリモジュールから段階的に新RCDを採用できるため、データセンター事業者はリスクを抑えながら性能を引き上げられる。ルネサスはすでにサムスン電子など主要DRAMメーカーへのサンプル提供を開始しており、量産開始は2027年前半を目標としている。サーバーメーカーやCPUベンダーとの評価作業が、いま水面下で進んでいる段階だ。
内部には、信号の状態をリアルタイムに監視する「DESTM」と呼ばれるテレメトリー機能も組み込まれた。メモリモジュールのどの経路にマージンの余裕があり、どこが限界に近いかを細かく可視化できるため、サーバーメーカーは設計のやり直しや設定変更を素早く行える。電力効率の改善も図られており、AIやHPC(高性能計算)、大規模言語モデルといった常時高負荷のワークロードにおいて、性能と消費電力の折り合いを付けやすくなる。ルネサスはこれまでもCPUやメモリ各社と協力し、RCD以外のバッファICなどを含めたメモリインターフェース製品群を広げてきたが、新世代RCDはその中核を担う位置づけになる。
冷却ファンの風が絶えず吹き抜けるサーバーラックの奥で、この小さなチップは静かにクロックを刻むだけだが、そのわずかな進歩が数年後のAIサービスの手触りを変えていくかもしれない。
