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ルビオ国務長官が2025年11月13日、ドイツ、イタリア、ギリシャで活動する4団体を国際テロ組織に指定したと発表した。4団体はいずれもアンティファ系とされ、20日以降に外国テロ組織（FTO）指定も発効する見通しだ。資産凍結や取引規制を通じ、政治暴力の抑止を狙う動きである。
米国務省が示した指定の中身と狙い
今回の措置は、特定指定国際テロリスト（SDGT）への追加に続き、FTO指定を適用する2段構えだ。SDGTは資産凍結や米国人との取引禁止を伴う制裁枠組みで、FTOは「物的支援」の提供を広く違法とする刑事枠組みである。政権は9月にアンティファを国内テロ組織として扱う方針を公表しており、国外ネットワークへの適用を進める形となった。
ルビオ氏は、対象団体が反米主義や反資本主義などの革命的思想を掲げ、国内外での暴力を正当化してきたと指摘した。資金や資源の流れを断つことで、同様の集団にも矛先を向ける考えを示し、20日からの発効に合わせて運用を強める構えだ。発表は政権の治安重視路線を象徴する一手となる。
アンティファは一般に、明確な指揮系統や統一的な組織構造を持たない分散的な運動とされる。今回の指定はその全体ではなく、暴力行為の実行や扇動が確認されたとする特定グループに対象を絞る形だ。概念的な運動と具体的な団体をどう切り分けるかという難題が、制度面の運用にも影を落とす。
示された事実関係と4団体の輪郭
ドイツ拠点の「アンティファ・オスト」は、2018年から23年にかけて自らが「ファシスト」や右派とみなす人物への攻撃を行ったとされる。さらに23年2月、ブダペストでの連続暴力にも関与したと国務省は整理した。欧州の一部で同団体を巡る治安上の指定が進んだ経緯も踏まえ、米側は国際的ネットワークに位置づけた。
イタリアの「非公式アナキスト連盟（FAI/FRI）」については、脅迫や爆発物、郵便爆弾の犯行声明を重ね、政治・経済の機関や裁判所などを標的にしてきたとされた。名称を共有する小規模セルが各地に点在する特徴があり、緩やかな連関のもとで「共通の語彙」を使い回す様相が指摘されている。分散性が捜査や抑止の難しさを増す。
ギリシャでは「武装プロレタリア正義」と「革命的階級自衛」が対象だ。前者は23年12月、アテネの機動隊本部近くへの爆発物設置を名乗ったとされる。後者は24年2月の労働省と25年4月の鉄道事業者事務所への即席爆発装置による攻撃の犯行声明が記録された。いずれも反資本主義を標榜し、国家や治安機関を敵対対象に据える。
制度がもたらす影響と広がる視線
制裁発効後は、米国内資産の凍結や米国人との取引禁止が直ちに及ぶ。FTO指定が加わると、資金提供や訓練、物品供与などの「物的支援」が広く刑事罰の対象となる。発表資料は、これにより勧誘や装備調達の経路を断つ狙いを掲げる。国外の関係者が米金融網を経由する場合も影響は小さくない。
一方で、分散する運動体の内外に線を引く作業は容易でない。抗議行動や表現の自由と、暴力や威嚇の排除をどう両立させるか。当局は声明や資金流の具体的関与を軸に個別団体を特定していくが、思想・言論と犯罪行為の境界を見誤れば萎縮を招く懸念もある。制度の説明責任が試される局面だ。
指定は治安の回路を固める一方で、運動の名をめぐる語りにも重みを与える。呼称の広さと、現実の行為の重さ。その落差を埋めるように、捜査と議論の双方が丁寧に積み重ねられていく必要がある。
