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ロシア外務省のザハロワ報道官は2025年10月30日、日本との平和条約協議の再開は、日本がいわゆる「反ロシア」路線を放棄した場合に限られるとの見解を示した。日露は第二次世界大戦の正式な終結をめぐる平和条約をいまだ締結しておらず、北方領土問題が長年の焦点となっている。
ロシア側の主張と発言の背景
現時点で確認されている範囲では、報道によれば同報道官は、日本の政策が二国間協力を行き詰まりに導いたと述べ、対話の進展には東京側の姿勢転換が不可欠だと強調した。発言は和平合意の見通しに関する質問に答える形で示され、対日メッセージ性の強さが際立った。こうした発言は、対話枠組みの再構築をめぐる条件提示としての性格を持ち、両国関係の緊張が続くなかでの政治的シグナルと受け止められている。
背景には、2022年3月にロシアが日本の対露制裁などを理由に、平和条約交渉の継続拒否を一方的に表明した経緯がある。日本政府は同年以降、北方領土の不法占拠という立場や、法と正義に基づく解決方針を繰り返し発信しており、双方の認識落差が固定化しているとみられる。交渉の枠組みが実質停止した状態が長引くことで、相互不信と硬直化した言葉の応酬が強まり、政治対話の糸口が見いだしにくい状況が続いている。
同氏は日本側の「反ロシア路線」の放棄を再開条件として挙げたが、その具体的内容や手順には言及しなかった。発言は抽象的な表現にとどまり、追加措置や対話スケジュールは示されていない。したがって、原則的立場の再確認という意味合いが先行しており、当面は相互の姿勢表明が続く一方で、実務協議の再開に直結する材料は見えにくい構図が広がっている。
日本側の立場と足元の政治状況
日本側の基本方針は一貫しており、北方四島は日本に帰属するとの立場の下で、帰属の問題を解決して平和条約を締結することを目指すとしてきた。政府は過去の合意や諸文書を踏まえ、交渉の枠組みを維持する姿勢を重ねて確認している。この方針は国会答弁や外相会見などでも繰り返し示されており、国際法と既存の取り決めに依拠したアプローチが基調である。
国内政治では、高市早苗首相の下で新体制が動き出しており、直近の閣議案件でも首相名が掲示されるなど政権運営が本格化している。先週の演説で領土問題解決と平和条約締結の方針維持を強調したとの見方も伝えられており、政府内の基本路線は従来から大きくは変わっていないとみられる。もっとも、政策の継続性を対外的にどう示し、停滞する実務協議へどう橋渡しするかが問われている。
もっとも、ウクライナ情勢に起因する制裁・対抗措置の応酬、交流事業の停止や往来の制約など、対話再開の環境は厳しい。日本としてはG7協調やエネルギー安定供給といった現実的制約も抱える。結果として、原則論の確認と実務の停滞が並存する状態が続き、外交上の選択肢は限られている。ロシア側の強い発信が重なる局面では、言葉の強度が交渉余地を狭める副作用も生じやすい。
見通しと今後の焦点
見通しとしては、短期的に隔たりが縮まる兆しは乏しい。ロシア側は条件付きの枠組みを公にし、日本側は国際法と既存の方針に基づく対応を崩していないためである。双方が自らの国内事情を優先する局面が続けば、政治的意思の表明は続いても、交渉再開の具体日程に落ちにくい。対話の枠を保ちつつ、事態の悪化を防ぐ管理型の外交が当面の主旋律になるとみられる。
今後の焦点は、実務レベルでの連絡経路の維持や、相互の立場を害さずに可能な分野で信頼醸成を積み上げられるかに移る。現時点で確認されている範囲では、墓参や地域交流の枠組みは縮小したままだが、危機管理や海上の安全確保など、限定的な協力の余地は残るとみられる。双方の国内議論を踏まえつつ、小さな合意を積み重ねることが、政治レベルの判断に繋がる可能性を広げる。
加えて、日本国内では領土問題の解決に向けた教育・情報発信や、関係国との連携の整備が問われる。ロシア側の発信は今後も強い表現を含む可能性があるため、発言の真意や政策的含意を丁寧に見極め、必要に応じて立場を説明する作業が一段と重要になっている。状況の推移を注視しつつ、対話の窓口を閉ざさない工夫が引き続き鍵となる。
