トランプ氏の露大手制裁で原油５％超急騰、供給不安がOPECプラスを揺さぶる

2025.10.24

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23日の夕刻、原油の価格曲線が跳ね上がった。米国のトランプ大統領がロシアのルクオイルとロスネフチに制裁を科した直後、指標油は一時５％超上昇。欧州も制裁の輪を広げ、供給不安の影が濃くなる中、OPECプラスは慎重な増産計画の舵取りを迫られている。市場と産油国の駆け引きが加速していると映る。

制裁の波紋、原油市場が素早く反応

取引端末の画面に、急角度のチャートが立ち上がった。23日夜から24日未明にかけて、ブレント先物の期近は期先より高い「バックワーデーション」に回帰し、需給の引き締まりが意識された。値幅は５％超。懸念は供給側へ重心を移し、過剰観測は一旦後景に退いたとみられる。

引き金は、米国によるロシア大手二社への新たな制裁である。制裁対象となったルクオイルとロスネフチは、ロシアの原油生産の大きな比重を占めるとされ、市場は即座に輸出停滞や決済網の目詰まりを織り込みにいった。今回の措置は、戦時下で導入された中でも最も厳しい部類に入るとの受け止めが広がっている。

欧州連合も同日に制裁を拡張し、ロシア産原油の流通に関与した一部の事業者を新たに対象に加えた。米欧の網が重なるほど、海上輸送や信用供与は細りやすい。先行きは、割安な原油を求める需要がどこまで持続できるか、そして代替調達のルートがどれほど早く再構築されるかにかかる構図が浮かぶ。

産油国側は、すでに慎重な「出し入れ」を続けている。ＯＰＥＣプラスの有志八カ国は、今月5日の協議で10月から日量13万7千バレルの増産に踏み切ると決定した。これは2023年に積み増した追加の減産幅（165万バレル／日）の一部を返す動きで、情勢次第で一時停止や反転もあり得る柔軟設計だ。

同じ声明では、23年10月に導入した日量220万バレルの自主減産についても、状況を見ながら段階的に見直す方針が繰り返し示された。各国は月例の監視委で在庫水準や需要の強さを点検し、過剰なボラティリティを抑えるための微調整を続ける構えである。矛先は安定の維持に置かれている。

今回の制裁で相場が跳ねたとはいえ、OPECプラスにとって拙速な放出は得策ではない。声明が強調する「健康的な市場の基礎」は、低在庫と堅調な需要に支えられてきた。供給ショックの兆しが濃くなるほど、歩幅は狭く、停止や反転のオプションを残す判断が増えるとみられる。

一部報道によれば、クウェートのターリク・ローミー石油相が23日、必要なら減産規模の縮小に応じる用意があると示したという。制裁による価格押し上げが続くなら、湾岸産原油への需要が厚みを増すとの見立ても伝わる。他方、現時点で確認されている範囲では、当局の公式資料で同趣旨の声明は見当たらない。

市場の視線は、11月2日の次回協議へ向かう。制裁の実効性がどの程度まで物流と決済に及ぶのか、そしてロシア産の迂回ルートに新たな制約が生じるのか。米欧の動きが重なるほど、アジアの一部精製会社は調達見直しを迫られる可能性がある。価格は政策の微妙な力学を試す局面に入ったと映る。

日本にとっても、冬場の需給不均衡は重い。原油と為替の二重の物価圧力が強まれば、国内のエネルギーコストと消費心理に波紋が広がりかねない。拙速な判断を避けつつ、備蓄・調達・需要抑制の三本柱で構えを固められるか。実体と期待のあいだをどう整えるかが問われている。