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南シナ海のサビナ礁付近で12月12日に起きた衝突をめぐり、フィリピン沿岸警備隊は漁船が中国側の放水を受け、3人が負傷し2隻が損傷したと発表した。これに対し中国は12月15日、現場に船を集めて対立をあおったのはフィリピン側だと主張した。木造の小舟で波を受ける漁師にとって、地図上の線引きは遠い話だが、衝突が起きれば医療や修理、操業の見通しが一気に揺らぐ。今回の応酬は、その脆さを改めて突きつけた。
「いつもの海」が危険になる瞬間
フィリピン側の説明では、サビナ礁付近で操業していた複数の漁船が高圧の放水を受け、船体が損傷したうえ、乗っていた漁師3人がけがをした。さらに一部の船は係留索を切られ、荒れた海況のなかで流される危険もあったという。救援に向かった沿岸警備隊の動きも妨げられたとAP通信は伝えた。
海のトラブルは、国家間の対立より先に生活を直撃する。けがは直接影響で、治療のための移動や収入の途絶が重なる。船の損傷は次の出漁までの時間を奪い、地域の小さな漁業ほど回復に時間がかかりやすい。衝突の報が続けば、同じ海域に出るかどうかの判断そのものが重い負担になり、漁場の「選択肢」が目減りする局面もあり得る。
放水は「非致死性」でも、威嚇としては強い
放水は、ひとことで言うと「銃を使わずに相手を離脱させる」ための手段だ。だが小型漁船にとっては、船体を壊し、人を転倒させかねない力を持つ。中国側は現場で「管理措置」をとったなどと説明し、フィリピン側が入ってきたと主張している。フィリピン沿岸警備隊は、生命の保護を優先すべきだと反発したとABCニュースは伝えた。
ここで問題になるのは、どこまでを「法執行」と呼び、どこからが「威嚇」なのかという線引きだ。海警や沿岸警備隊は本来、取り締まりと救難の両方を担うが、相手が漁民のような非武装の民間人であれば、衝突の重みは変わる。非致死性の装備ほど、使い方を誤ると「撃たない代わりに壊す」形になり、現場の緊張を下げるどころか固定化する危うさがある。
礁は小さくても、争点は海のルール全体に広がる
サビナ礁はフィリピンのパラワン島から約150kmとされ、フィリピンは自国の排他的経済水域内だと位置づけている。排他的経済水域は、ひとことで言うと「資源を優先的に利用できる海の範囲」で、領海のように全面的な主権が及ぶわけではない。それでも漁業や資源開発の前提になるため、現場の衝突はそのまま国家の主張のぶつかり合いへ転じやすい。
中国は南シナ海の広い範囲に権利を主張してきた一方、2016年の仲裁判断はその主張を否定した経緯がある。今回のように漁船が巻き込まれると、争点は「どちらの船が先に来たか」だけでは済まない。海上での安全確保、救援へのアクセス、取り締まりの比例性といった、海のルール全体の信頼が問われる。生活者にとっての影響は間接的だが、衝突が常態化すれば、警戒や外交対応にかかる公的コストが膨らむ可能性も出てくる。
緊張を下げる道はあるのか、残る二つの分岐
フィリピン側は抗議を強め、防衛相も「危険で非人道的だ」と批判した。中国側は、挑発を受けて対応したという構図で押し返している。こうした応酬は国内向けの説明としては分かりやすいが、海上では次の接触を呼び込みやすい。言い分をぶつけ合う局面ほど、現場で守るべき最低限の手順、例えば救難を優先する合意や連絡窓口の実効性が試される。
先行きは大きく二つに分かれる。一つは、当局間の通報や危険行動の抑制ルールを積み上げ、漁民が巻き込まれにくい運用へ寄せていく道だ。もう一つは、双方が「実効支配の誇示」を優先し、船の数と接触回数が増える道である。12月のサビナ礁をめぐる火花は、外交の勝ち負け以前に、海で働く人の安全をどこまで制度で守れるのかという問いを突きつけているとロイター通信は伝えた。
参考・出典
- Philippines denounces China’s ‘dangerous’ and ‘inhumane’ actions against Filipino fishermen(Reuters、2025年12月16日)
- Philippines says fishermen hurt, boats damaged by China in South China Sea(Reuters、2025年12月13日)
- Philippines says 3 fishermen injured by Chinese coast guard’s water cannons off disputed shoal
- Philippine fishing vessels damaged by Chinese coast guard in South China Sea
- PCA Press Release: The South China Sea Arbitration (The Republic of the Philippines v. The People’s Republic of China) | PCA-CPA
