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スペインのペドロ・サンチェス首相が、EUが進める「2035年からCO2を排出する新車を実質的に市場から退場させる」方針を弱めないよう、欧州委員会に要請した。Reutersが確認した書簡で判明したもので、EUが自動車政策パッケージを公表すると見込まれる2025年12月16日を前に、主導権争いが表面化している。
「先延ばしの誘惑」が現場の投資判断を鈍らせる
書簡でサンチェス氏は、規制の追加緩和が起きれば、企業が電動化に踏み切るための設備更新や人材転換が遅れ、結果として雇用や産業の競争力に跳ね返るとの懸念を示した。販売の現場でも、規則が揺れれば買い手が様子見に回りやすく、需要の一時的な冷え込みが投資の腰を折りかねないという理屈だ。
EUの制度上、2035年以降の新車は排出量をゼロにする「100%削減」が柱で、狙いは気候目標の達成だけではない。電池、充電、素材など周辺産業も含めて欧州域内に投資を呼び込み、供給網を組み替えるための“期限”として機能してきた。サンチェス氏は、この期限を曖昧にしないこと自体が政策効果だと訴えた格好である。
緩和論の綱引きと、EUに残る現実的な手当て
一方で、目標の扱いを巡っては加盟国や業界の足並みがそろわない。Reutersは、独伊などで「競争環境が厳しくなるなか、規制の柔軟化が必要だ」との主張が出ていると伝えている。欧州議会最大会派の幹部が、2035年目標を「90%削減」にする案に触れたとの報道もあり、政策パッケージの中身が注目される。
ただし、規制を丸ごと緩める以外にも手当てはあり得る。実際、EUは2025年にメーカーの目標達成を年単位ではなく3年平均で評価する仕組みを追加し、投資と雇用の急ブレーキを避ける「一時的な柔軟性」を導入した。2035年の到達点を維持するかが焦点である一方、短期の負担をどう平準化するか、素材の低炭素化や域内生産比率の扱いをどう設計するかが、次の折衷点になりそうだ。
参考・出典
- Spain urges EU not to weaken 2035 combustion engine ban, letter shows（Reuters、2025年12月12日）
- Europe's EV sector warns about 'efforts to dilute' EU emissions targets（Reuters、2025年12月10日）
- Cars and vans
- CO2 emissions in cars: Council gives final approval to additional flexibility for carmakers（Council of the EU、2025年5月27日）
- Fit for 55: zero CO2 emissions for new cars and vans in 2035 | News | European Parliament
