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沖縄県・尖閣諸島周辺の海で、また新たな対立が起きている。海上保安庁は2日、尖閣周辺の日本の領海で操業中の漁船に中国海警局の船が近づいたため、巡視船が領海外への退去を求めたと明らかにした。一方、中国海警局は、日本漁船が自国の領海に不法侵入したと主張し、所属船が追い出したと発表しており、板挟みになる漁師の安全をどう確保するのかが改めて問われている。
尖閣の漁場で続く「板挟み」の日常
今回の事案が起きたのは、尖閣諸島の接続水域より内側、日本が領海と位置づける海域だ。海保によれば、巡視船は早朝から操業していた日本漁船の周囲で警戒線を築き、接近してきた中国海警局の船に対し、無線やスピーカーで繰り返し退去を要求したうえで、領海外へ出るまで監視を続けたという。現場では、波とエンジン音の向こうで、白い船と白い船がにらみ合う構図が続く。
中国海警局は同日、尖閣の中国名である釣魚島とその周辺は自国の領海だとしたうえで、日本の漁船が「不法に侵入した」と主張し、所属船が「法に基づいて」警告し退去させたと発表した。日中それぞれの説明では、自国の海域に相手が入り込んだという前提が置かれ、そこで漁をしていた民間の船は、主権アピールの対象として名前だけが登場する存在になりがちだ。
石垣島など地元の漁業者からは、こうした接近が常態化しつつあるとの声が出ている。海上保安庁の集計では、2023年に中国海警船が尖閣周辺の接続水域を航行した日数は337日に達し、20年以降は年間330日超が続く。沖に出ればほぼ必ず他国の公船を目にする環境で、安全に漁を続けられるのかという不安は根強いままだ。
中国と日本、ぶつかる法律とメッセージ
尖閣諸島は日本が実効支配し、国内法上も日本の施政下にあると政府は説明している。一方で中国政府は、釣魚島とその周辺は「古来からの中国の領土」と繰り返し表明し、海警局の活動を国家主権の行使だと位置づける。今回のように、同じ出来事を双方が「自国の領海で相手を追い払った」と発表する構図は、主権を譲らない姿勢を内外に示す政治的メッセージの意味合いも色濃い。
その背景には、中国が2021年に施行した海警法の存在がある。この法律は、中国が「管轄海域」とみなす水域で停船命令に従わない外国船に対し、武器の使用を含む強い権限を海警局に与える内容で、日本政府や各紙は、国連海洋法条約が想定する沿岸国の権限を逸脱し、独自の海洋権益を既成事実化しようとする動きだと警戒してきた。法的枠組みそのものの解釈が異なるため、現場の緊張もほどけにくい。
中国側は今回も、海警局が「権利保護のための法執行」を粘り強く続けると強調し、釣魚島周辺での巡航を常態化させる方針を示した。ロイター通信などは、こうした強い表現が、日本の高市早苗首相が台湾有事に自衛隊の関与を示唆した国会答弁の直後に出たことを指摘する。尖閣をめぐる一つ一つの事案は、いまや東シナ海全体の安全保障バランスと連動したシグナルとして読み取られている。
緊張が続く海で、どうリスクを減らすか
主権問題で譲れない立場を維持しつつ、現場の危険を抑えるには、漁船を守る具体策を着実に積み上げる必要がある。海保は現在も尖閣周辺に多数の巡視船を常駐させ、操業を予定する漁船に対して事前の航行計画の共有や、外国公船が異常接近した際の連絡手順の確認を呼びかけている。小さな漁船が突然、他国の公船に囲まれても迷わず行動できるような訓練や情報提供が欠かせない。
同時に、政治・外交レベルでの危機管理の枠組みも重要だ。日中両政府は、防衛当局間のホットライン開設など、偶発的な接触が武力衝突に発展しないための仕組みづくりを進めてきたが、海警と海保の現場でどう運用していくかはなお模索が続く。今回のような「言葉の応酬」の段階で緊張を抑えるルールや慣行を積み重ねられるかどうかが問われている。
主権をめぐる根本的な対立が一朝一夕に解ける見通しはない。それでも、漁の現場が過度な危険にさらされないよう、静かにリスクを減らす工夫をどこまで積み上げられるかが、これからの東シナ海の姿を左右しそうだ。
