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米政府の資金切れが目前に迫るなか、トランプ大統領が「閉鎖の責任は民主党にある」と強い調子で突き放した。与野党の応酬は激しさを増し、上院可決に必要な歩み寄りの糸口は細いままだ。仮に閉鎖となれば、雇用統計など主要データの公表に影響が及ぶ見通しで、市場と実体経済の両方に緊張が走る。
強気の大統領、膠着する与野党の距離
ホワイトハウスの芝生で記者団に囲まれた大統領は、政府閉鎖の可能性を否定せず、責任は野党にあると語気を強めた光景が目に浮かぶ。財政の時計は静かに進み、歳出の空白が生まれる期限は目前だ。上院与党のスーン院内総務は「解決への道はある」とする一方で、野党が掲げる医療関連の要求を引き下げる必要があると牽制した。民主党側は「大統領が混乱へと国を進ませている」と反発し、会談取りやめの決定を強く批判している。
このやりとりの裏には、与野党それぞれが自らの支持層に向けて発信する緊張感が漂う。大統領は「まず政府を開かせよ」と迫り、民主党は保険料の急上昇を避けるための手当てを同時に進めるべきだと迫る。双方の主張は平行線をたどり、議会日程の残り時間が短くなるほど、発言は硬く尖りやすくなる。現時点で確認されている範囲では、与党上院指導部からも「対話の余地」をにじませるシグナルは出ているが、歩み寄りの順番を巡る認識はかみ合っていない。
「7週間」の綱渡りと医療費を巡る綱引き
下院は政府機能を延命するつなぎ予算案を可決済みだ。期間は「7週間」。歳出の全体像は先送りしつつ、冬の入口まで時間を買う設計である。だが、野党は医療保険の補助金延長や、今年の税制・歳出法で盛り込まれたメディケイド削減の取り消しなどを同時に議論するよう求めている。与党の言う「まず開けてから」の順番と、野党の「負担増を避ける歯止めを先に」の順番が衝突し、上院で必要な賛同を積み上げられない。
スーン氏はAP通信の取材に「要求を引き下げれば回避できる」と繰り返し、野党票の上積みを探る構えを見せた。これに対し、下院民主党トップのジェフリーズ氏は「大統領と与党が交渉を拒み、閉鎖へ進ませている」と語り、保険料の上振れを防ぐ措置を譲れないラインとして描いた。上院では与野党それぞれの短期案が相次いで否決され、同じテーブルに同じ議題を並べるだけでは動かないことも露わになった。
閉鎖で何が止まるか——焦点は雇用統計と政府データ
破綻回避の糸口が見えなければ、閉鎖初日から「数字」が沈黙する。ロイターの報道によれば、歳出の空白が生じた場合、労働省統計局の業務は原則停止となり、雇用統計や消費者物価などの公表は遅延する見通しだ。BLSは次回の雇用統計を10月3日に予定しているが、閉鎖が続けば延期となり、市場の判断材料は一気に乏しくなる。連邦準備制度が自前のデータ公表を続けられるとしても、経済の体温計としての政府統計の穴は小さくない。
統計の空白は、金融政策の読み筋だけでなく、企業の投資判断や家計の期待にも波紋を広げる。失業保険の新規申請など、景気循環の敏感なシグナルにも遅れが出るためだ。足元では、労働省が雇用統計の基礎となる調査スケジュールを淡々と告知している一方、閉鎖下の運用は別のレールに切り替わる可能性が高い。政府の歯車が一時停止すれば、数字を積み上げてきた現場の手も止まり、景気の輪郭は一時的に霞む。
「責任」はどこへ向かうのか
政治は責任の所在を競うが、経済は遅れの帳尻を必ずどこかで合わせに来る。短期のつなぎで時間を稼いでも、医療費を巡る負担の分配と、財政の持続性という宿題は消えない。閉鎖回避の「7週間」は、双方がどの項目で譲り、どの項目で線を引くかを具体化するための時間に他ならない。市場が最も嫌うのは、結論の先送りを重ねることで不確実性が常態化することだ。
与党は「まず政府を開けよう」と主張し、野党は「負担増を止めよう」と食い下がる。どちらの順番が先でも、最後に必要なのは同じテーブルでの合意である。閉鎖の刻限が近づくほど、言葉は強まり、行動の選択肢は狭まる。数字が沈黙する前に、政治が現実的な落としどころを示せるかどうかが問われている。
