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ひんやりした秋の空気が流れる国会内で、野党6党がガソリン税の暫定税率をめぐる与党対応を協議したのは2025年10月23日である。与党が前日の22日に示した「2026年2月1日廃止・補助金段階引き上げ」案に、6党は一斉にノーを突き付け、年内施行の確約を軸に再交渉へと舵を切った。暮らしの足元を支える価格の行方を、政治がどう掴み直すかが焦点となっている。
年内施行を譲らない6党の足並み
集まったのは、立憲民主党、国民民主党、日本共産党、参政党、日本保守党、社会民主党の6党である。協議では、当初掲げてきた「11月1日施行」の方針を土台にしつつ、施行日を修正してでも年内に暫定税率を廃止するという方針を改めて確認した。場内には、先送りを許さないという空気が漂い、足並みのそろい方が際立った。
協議後、立憲の重徳和彦税制調査会長は記者団に、年内実施は立法府の意思だと強調した。与党提案は公党間の合意に反し受け入れられないとの認識を示し、補助金の段階投入では価格低下の実感が後ろ倒しになる懸念が強いと語った。年内の施行を法律で確約すべきだとの主張が前面に立ち、妥協の余地は狭いと映る。
具体案としては、11月1日の施行日に固執せず、12月半ばから下旬の実施を含めて詰めるべきだとの声が出た。重徳氏は、補助金引き上げの開始を前倒ししつつ、例えば12月25日実施も見据えたいとする考えを示唆した。野党側は、日付を明確に置くことで、政府に準備の前倒しを迫る狙いをにじませ、決着点の輪郭が見え始めた。
与党案とのずれと交渉の焦点
自民党側は22日の協議で、施行日を2026年2月1日とし、それまでの間は補助金を段階的に引き上げて負担軽減を図る案を提示したとされる。だが、7月30日に与野党で交わした「年内のできるだけ早い時期に実施」との合意からは距離がある。与党内調整と現場の準備を理由に、時間軸が後退してきた構図が浮かぶ。
野党側は、補助金だけでは価格の下がり方が見えにくく、自治体や物流の現場も判断しにくいと警戒する。法施行日を年内に定め直し、そこから逆算して制度移行や周知を急がせるべきだとの立場である。口約束の積み重ねでは合意が骨抜きになるとの危機感が、会見での言葉の端々から伝わってきた。政治の時計を止めない工夫が問われている。
一方で、制度設計では恒久財源、流通や小売現場の調整、地方財政への配慮など、詰めるべき論点は多い。7月の合意文書にも、こうした課題を与野党協議体で精力的に詰める方針が記されている。年末の税調日程に縛られず、実務者協議を継続することが、暮らしの安心に直結する。実施の確度をどう高めるかが勝負どころとなる。
約束の重みと、首相のリーダーシップ
時期をめぐる振れは、この数カ月で増幅した。当初は11月1日施行を掲げて法案を用意し、与野党は年内実施を確認した。だが実施時期は次第に曖昧になり、政府・与党内の調整を理由に先送りの気配が強まっている。野党6党は「年内の約束」を軸に足並みをそろえ、迷いを断つ姿勢を濃くした。政治の責任が、目に見える期日に集約されつつある。
矢面に立つのは高市首相である。早期廃止をめざす姿勢を示してきたと受け止められる一方、足元の提示は「役所ベース」で期待外れだという厳しい声も出た。政権のトップがどこまで自民党内を動かし、与野党合意を実装に落とし込むのか。首相の号令で準備の速度が変わる局面といえる。ここでの判断が分水嶺になるとみられる。
国会は秋の臨時会期のただ中にある。価格高騰の負担を抱える暮らしに実感を届けられるかは、最終の施行日をいつに定めるかにかかる。年内の線を守るのか、与党案の線に寄せるのか。政治の時計は止まらない。残された時間で、言葉の合意を法と施行日に落とし込めるかが問われている。与野党の次の一手に注目が集まっている。
