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国民民主党が独自に作成した「スパイ防止法」の骨子案が11月14日に判明した。外国の利益を図る目的で活動する個人や団体に、政府への届け出を求める制度を新設。インテリジェンス（情報活動）の司令塔となる行政組織の整備も掲げ、今国会での提出を視野に各党へ同意を求める構えだ。
届け出制度と司令塔構想の中身
骨子案は、外国勢力による国内での働きかけを可視化する狙いから、活動の登録・一部公開を伴う届け出制度を柱に据える。対象や手続きの詳細は今後詰めるが、資金の流れと影響の範囲を明らかにする仕組みを置き、違反時の是正措置を定める方向だ。
関係者によると、政府横断の調整役として、首相を長とする「インテリジェンス態勢整備推進本部」（仮称）を設置する構想も盛り込んだ。内閣情報調査室や警察、外務・防衛などに点在する知見を束ね、平時からの情報連携と危機時の意思決定を早める狙いだ。
さらに、収集・分析に特化した独立機関の創設も検討対象に置く。諸外国の制度を参考に、政治から一定の距離を保つ組織設計や、国会による監督（オーバーサイト）をあわせて設ける案が出ている。登録制度と連動させ、把握した情報を政策に生かす。
背景にある「不当な影響力」—海外制度との比較
骨子案は、外国による不当な影響力行使の脅威が強まっているとの問題意識を共有する。論点は、資金提供や情報発信、研究協力など多様な接点をどう透明化するかだ。届け出制度は、外国エージェント登録（外国の利益のために活動する者の登録）に近い性格を持つが、範囲や罰則の設計で自由との均衡が問われる。
過去の同種議論では、報道・取材の自由や学術・経済交流への萎縮が懸念されてきた。今回の骨子案は、刑罰の強化よりも活動の可視化と体制整備を前面に出す構成で、恣意的な運用を抑える定義や手続き保障をどこまで書き込むかが肝となる。第三者の審査や異議申立ての窓口づくりも検討課題に浮かぶ。
インテリジェンスの態勢整備は、特定秘密保護法や経済安全保障関連法と接点がある。部署横断の情報共有や監督の透明性を高め、必要な範囲に限定したアクセス権限を設けるなど、既存法制との整合を取ることが前提となる。制度が重なれば現場の負荷が増すため、運用の簡素化も欠かせない。
与野党の思惑と国会の行方
与党側では、自民党と日本維新の会の連立合意に「スパイ防止」関連法制の検討開始と迅速な成立の方針が盛り込まれた。臨時国会の課題に位置づけ、関係法の整備を前へ進める姿勢を明確にしている。
一方、参政党も法案提出を目指すと発言してきた。野党内でも賛否は割れるが、立法趣旨に賛同する勢力が広がれば、提出への環境は整いやすい。議論は広がり、条文設計の具体と適用範囲が次の焦点となる。
国民民主は、党内取りまとめ後に与野党協議を呼びかけ、会期内の提出を狙う構えだ。登録制度の実効性と、表現・取材の自由を守る歯止めをどう両立させるか。設計の巧拙が、政府と社会の距離を近づけるかどうかを左右しそうだ。
