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装置の図面を囲む技術者たちが熊本市の研究棟で身を寄せ合う。長州産業が熊本大学と組み、超臨界流体成膜で半導体製造装置の実用化に挑む。学内の新拠点に開設した開発センターを起点に、深いシリコン貫通ビアの量産対応を狙う構えだ。高温高圧の流体が運ぶ均質な膜で、3D実装のボトルネックを越える。要素技術は2027年度までに固める計画で、装置化と事業化へ前進する。
共同拠点が動き出す
熊本大学の半導体研究拠点「SOIL」に、長州産業の開発センターが最初の入居者として扉を開いた。熊本市中央区のキャンパス内に整備されたオープンラボは、大学の知見と企業の装置技術を重ねる場だ。百瀬健教授の研究室と長州産業が同じフロアで試作と測定を回し、実験の手戻りを減らす体制を整えた。研究と装置設計が近接することで、要素の改良を日単位で反映できる。
開所式が行われたのは2025年10月17日。大学側は連携の相乗効果に期待を寄せ、企業側も「ハードルは高いが挑戦したい」と語気を強めた。単なるラボの貸与ではなく、同大学の設備や分析機器、人材を束ねる共同の実装現場として回り始めたことが大きい。装置の基礎試験から制御のチューニング、歩留まり評価までを同一拠点でつなぎ、開発の節目を短く刻む目論見だ。
センターは装置の根幹となる成膜プロセスの安定化を最初の焦点に据える。膜厚のばらつき、段差被覆、欠陥密度といった指標を共通の物差しで追い、大学の解析と企業の設計改修を往復させる。SOILには他企業の入居準備も進み、将来的には測定や前後工程のリソースを相互に使い合う構想もある。地域に集積する装置・材料の動きと呼応し、量産を見据えた検証の速度を引き上げる。
超臨界で塗り残しをなくす
超臨界流体成膜は、物質が臨界点を越えた状態で示す拡散性と溶解性を利用する。気体のように細部へ入り込み、液体のように材料を運ぶ特性が同居するため、深く細い溝の奥まで前駆体を届けやすい。高アスペクト比の穴形状で起こりがちな空隙や陰影部の薄膜不足を抑え、ビア全体に近い厚みで覆えるのが強みだ。温度ストレスを抑えつつ、表面反応を進められる点も素子保護に利く。
3D実装に不可欠な貫通ビアでは、障壁層やシード層の均一性が後工程の電解めっきや金属充填の成否を左右する。塗り残しがあればボイドやクラックの起点になり、歩留まりを削る。SCFDはこうした課題に真っ向から切り込み、微細で深い形状にも連続した被覆を与えることを狙う。薬液や前駆体の選定、圧力・温度・流量の制御が鍵で、プロセスと装置の同時最適化が求められる領域である。
量産までの距離と、装置化の壁
当面のゴールは、期限内にプロセスと制御の要素を揃えることだ。その後に試作機を立ち上げ、搬送やチャンバー設計、耐圧・安全規格への適合を順に詰める段取りである。高温高圧を扱うため、シール材の劣化や微小リーク検知、非常停止時の圧力開放など、装置ならではのリスク設計が多い。加えて、スループットと再現性の両立、前後装置とのインターフェース整備も避けて通れない。
それでも現場には追い風がある。大学の評価技術に直接アクセスできること、地域に材料・部材の供給網が育っていること、実証から装置化までの距離が縮んだことだ。センター長らは発言を抑えめにしながらも、現実的な歩幅での前進を繰り返し示す。静かながら確かな手応えが積み上がれば、深いビアの奥で途切れていた膜が連続し、3D実装の工程表に新しい選択肢が描き込まれるかもしれない。