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秋の風が静かに吹く昼下がり、胎内市の小さな厨房で起きた出来事が警察発表で明らかになった。2025年10月22日、胎内市野中に住む51歳の中国籍の調理師が、不法残留状態の35歳の中国籍の男を店で働かせた疑いで逮捕された。男は「期限切れを知らなかった」と否認しており、雇う側の確認責任があらためて問われている。
静かな厨房で浮かんだ「疑い」
新発表があったのは2025年10月22日。新発田警察署は、胎内市野中の飲食店で働く51歳の調理師の男を、入管難民法違反（不法就労助長）の疑いで逮捕した。現時点で確認されている範囲では、男は自ら関わる店舗で、在留資格を失った外国人を働かせたとされる。店先の明かりはいつも通りでも、台所の奥で法の線引きがにわかに浮かび上がった格好である。
疑いがかかる就労は2025年8月下旬から10月中旬にかけて続いたとみられる。働いていたのは35歳の中国籍の男で、在留期間の更新をしないまま国内にとどまっていた。男は2025年10月17日に不法残留の疑いで現行犯逮捕され、その周辺捜査のなかで飲食店での就労実態がつながったと映る。逮捕された調理師の男は「期限切れを知らなかった」として容疑を否認している。
一部報道によれば、不法残留の発覚は落とし物がきっかけだったという。2024年7月1日から2025年10月16日まで、約1年3か月にわたり国内に残留したとされ、在留カードの有効期限切れが警察の確認で露見した。日常のほころびから、長く見えづらかった滞在の実相がにわかに姿を現した構図が浮かぶ。
二つの逮捕が結ぶ線
10月17日の現行犯逮捕は一点の事実でしかなかったが、数日を置かずして店側への捜査に波及した。働いていた側の身柄確保から、働かせた側の関与へと視線が移る。警察は雇用の実態、勤務日数や賃金の授受、指揮命令の形など、就労の中身に踏み込んで関連を探っている。台帳や勤怠記録、在留カードの写しの有無など、確認すべき手掛かりは少なくない。
入管難民法は、不法就労を助長する行為を禁じている。単に「働いた側」にとどまらず、「働かせた側」にも矛先が向くのはそのためである。忙しい現場では人手不足が慢性化し、紹介や口コミで人を頼る場面も広がっているが、雇用の入口での在留資格と就労可否の確認は避けて通れない。制度の網と現場の実情の隙間を、今回は捜査が丁寧に縫い合わせているといえる。
一方で、逮捕された調理師の男は期限切れの認識を否定している。知っていたのか、知らなかったのか。ここは事件の成否に直結する焦点だ。現時点で確認されている範囲では、警察は雇用過程の説明や確認書類の扱い、会話の記録などを重ね合わせ、故意や過失の有無を見極めようとしている。知らなかったという言葉がどこまで届くのか、判断はこれからである。
雇う側に求められる細い糸
今回の一件は、現場でできる予防策を静かに示唆する。在留カードの有効期限や就労制限の有無を対面で確認し、写しを保管する。期限が近づけば再確認の機会を設ける。採用時だけでなく配置転換や雇用継続の節目にも見直す。こうした地味な手続きが、後に大きなほころびとなる芽を摘む。忙しさの只中でこそ、手順の徹底が安全網になると映る。
地域の店は、働き手も客も顔の見える関係でつながっている。制度の運用が厳しくなるほど、現場は閉じこもりがちになるが、正しい手続きと適切な相談先を持つことが、無用の不安を和らげる近道だ。外国にルーツを持つ人々の暮らしと、地域の商いがともに続くために、確認と支え合いの細い糸を、日々の実務で編み直す必要がある。
逮捕という事実は重いが、結論はまだ先にある。現時点で確認されている範囲では、警察は雇用の実態や動機の解明を進めており、追加の発表があれば輪郭はさらに明確になるだろう。静かな厨房に戻る日常は、法と現場のあわいにある。今回の出来事が、地域の働き方を見直す小さな契機として広がっている。
