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キーボードをたたく音が静かな執務室に響いた。台湾の頼清徳総統が米紙ワシントン・ポストへの寄稿を送り出したのは、緊張が続く台湾海峡をにらんだ一手だった。25日付の寄稿で、総統は今後数年で国防予算を約400億ドル積み増し、米国製の新たな兵器を大規模に購入する計画を初めて具体的に示した。中国の軍事的圧力が強まる中、台湾がどのように抑止力をかたちにしようとしているのかが浮かび上がる。
防衛費の大幅増額で狙う「非対称」抑止力
頼総統が寄稿で「画期的なパッケージ」と呼んだのは、米国からの兵器購入資金と台湾独自の防衛力を同時に底上げする構想である。非対称能力とは、大国と同じ装備を数で競うのではなく、機動力の高いミサイルや無人機、小型艦艇などで相手の弱点を突く戦い方を指す。総統は、こうした力を整えることで、中国が武力行使を決断する際のコストと不確実性を高め、決断そのものを鈍らせたいと強調した。これまで増額方針だけを語ってきた総統が、具体的な規模と方向性を示した意味は小さくない。
台湾政府が2026年度予算として立法院に提案している国防費は9495億台湾ドル、米ドル換算で約302億5000万ドルとされる。域内総生産(GDP)に対する割合は3.32%で、2009年以来初めて3%台に乗る水準だ。この数字には沿岸警備隊の経費も含まれ、現在の約2.45%から一気に引き上げる内容になっている。頼総統は別の場で、2030年ごろまでに5%を視野に入れる考えも口にしており、前任の蔡英文政権が1.8%前後から2.5%程度まで徐々に高めてきた流れを、さらに加速させる構えだ。背後には、自らの防衛努力を強めるよう求めてきた米国の期待も透けて見える。
トランプ氏への言及と、中国との対話のゆらぎ
寄稿のもう一つの柱は、米国、とりわけトランプ大統領へのまなざしである。頼総統は、トランプ氏が世界における米国の指導力の重要性を明確に示したとしたうえで、「力を通じて平和を追求する」姿勢のおかげで国際社会はより安全になっていると持ち上げた。力を通じた平和とは、強い軍事力を背景に戦争を抑え込もうとする考え方であり、台湾が進める非対称抑止と重なる部分が大きい。ただ、トランプ政権発足の1月以降、米国が承認した台湾向け武器売却は、戦闘機の予備部品など約3億3000万ドル規模の1件にとどまるとされ、供給ルートの細さは残ったままだ。
それでも頼総統は、中国との対話の扉を閉ざすべきではないと書いた。民主主義と自由は譲れない価値だと前置きし、その理解に立って両岸対話の機会を追い続けるとしたうえで、その姿勢は一部が指摘するような「希望的観測」ではなく、より確かな土台に根ざしていると訴えた。中国は台湾を自国の一部と位置づけ、軍事演習や威嚇飛行を繰り返している。軍備拡充と対話継続という一見矛盾する路線は、こうした圧力の中で、台湾が自らの安全と生活を守るために選び取ろうとしている細い道筋でもある。
