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台湾の検察庁で18日、軍や防衛に関わってきた人々の名前が静かに読み上げられた。中国共産党のために情報を集めた疑いで、香港出身の中国人の男と台湾の現役・元軍人ら7人が起訴されたのだ。かつて同じ部隊で汗を流した仲間が、国家の安全を脅かしたとされる構図に、社会には複雑な空気が広がっている。
香港出身の男と軍人ら、どのような疑いがかけられているのか
台湾高等検察署は2025年11月18日、香港出身の中国人・丁被告と台湾人6人を、国家安全法や刑法、陸海空軍刑法などに違反したとして起訴した。台湾側の6人は現役軍人と退役軍人で、軍事や防衛、政府に関する機密情報を外部に渡した疑いが持たれている。法務部調査局によれば、丁被告は今年7月に台湾で身柄を拘束され、調べが進められてきた。有罪となれば、最長で20年の拘禁刑が科される可能性がある。
検察の説明では、丁被告はビジネスや観光を装って何度も台湾を訪れ、退役軍人らに接触したとされる。金銭的な見返りなどを提示して協力を取り付け、彼らを核としてさらに現役・元軍人を勧誘させ、軍事機密の収集網を広げていったという。この過程で得た情報の一部は、中国側へ送られた疑いがある。発端は国防部による内部調査で、不審な情報流出が見つかり、複数の機関が合同で捜査に乗り出した結果、関係者8人が浮上し、そのうち1人はマネーロンダリングの罪で別途起訴された。
増えるスパイ摘発、台湾社会が直面する長期戦
今回の事件にはもう一つの特徴がある。高等検察署の報道官によれば、中国人が台湾の領域内でスパイ行為の罪に問われるのは2017年以来だという。一方で、台湾国家安全局の報告では、中国のためにスパイ活動を行ったとして起訴された人数はここ数年で急増し、2021年の16人から2024年には64人へと跳ね上がった。背景には、中国側が圧力と威嚇を強める中で、軍隊や政府のみならず地域組織まで標的を広げている現状があるとみられる。
法務部調査局は、多くの潜入工作が中国本土など海外からの遠隔操作で行われ、台湾側の「協力者」を通じてネットワークが築かれていると指摘する。今回も、現地で暮らす退役軍人らが窓口となり、日々の会話や内部資料を通じて情報が吸い上げられていった可能性がある。台湾の国家安全法は、こうした対中スパイ行為や機密の漏えいを罰するために整備された法律で、検察は「戦友と祖国を同時に裏切った行為だ」として、関係者に対し最も重い処罰を求めている。
防衛の最前線に立つ人々の心の隙間を狙う静かな工作は、判決が出た後も長く社会に影を落とし続けるのかもしれない。