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官邸の会見場に静かなざわめきが広がった。木原稔官房長官は2025年10月28日の閣議後会見で、高市早苗首相が30日から11月1日まで韓国・慶州を訪れ、APEC首脳会議に出席すると発表した。日本はルールに基づく自由で公正な経済秩序の維持・強化を訴え、地域の強靭な成長へ確固たる意思を示す構えだ。
閣議後会見で示した訪韓の狙い
木原官房長官は、今回の訪韓が日本の外交の軸である「ルールに基づく自由で公正な経済秩序」を体現する場になると強調した。現時点で確認されている範囲では、首脳会議の討議を通じて日本の立場を発信し、アジア太平洋の繁栄と安定に向けた国際協調を後押しする狙いがあると映る。
同時に、経済の現場で進む構造変化への処方箋も意識する。貿易・投資の課題に加え、AIや人口動態の変化といった新たな論点を俎上に載せ、包摂的かつ強靭な成長モデルを各国と描く見通しだ。供給網の多層化やデータ流通のルール形成にも議論の射程が及ぶとみられる。
木原氏はまた、韓国を含む各国との首脳会談の調整が進んでいると明らかにした。会談の具体的な相手や時刻は詰めの段階だが、二国間の懸案から地域情勢まで幅広く意見を交わす機会となりうる。多国間と二国間を交差させる外交運動が加速している。
慶州での首脳会議、日程と議題
首相は30日に東京を発ち慶州入りし、31日と11月1日に首脳会議に臨む日程である。会期中に全体会合や関連行事が続き、最終日に帰国の途につく。議長国は韓国で、古都の会場にはAPECの21エコノミーの首脳が集う。地域の稼ぐ力を底上げする視点が求められる局面だ。
議題は、貿易・投資に関する課題のほか、AIがもたらす生産性とリスク、人口動態の変化が及ぼす労働や社会保障への影響など多岐にわたる見通しだ。日本は透明性と相互互恵を軸に、デジタルや脱炭素の分野で共通ルールの醸成を促し、地域の成長エンジンを再点火させる方針を示す。
慶州では、歴史の層が重なる街並みに各国の課題が交錯する。国境を越える課題に対し、個別利益の調整をどう着地させるかが焦点となる。合意文言の一つ一つが次の年の政策運営を左右するだけに、文言の裏にある各国の思惑をどう束ねるかが試されている。
首脳会談の行方と日韓の課題
首相は訪韓の機会を捉え、各国首脳との対面外交を積み上げる構えだ。現時点で確認されている範囲では、会談は最終調整中で詳細は流動的だが、二国間関係の深化と地域秩序の安定化をめぐる認識合わせが中核となる。多層に絡む経済・安全保障の議題が浮かぶ。
とりわけ日韓では、サプライチェーンの強靭化やデジタル・グリーン分野の協力、人の往来の更なる円滑化などが俎上に載る可能性がある。歴史認識や輸出管理の経緯を踏まえつつ、実務協力の積み上げで信頼を可視化できるか。会談の温度感が今後の関係の地図を描く。
多国間の大舞台で何を語り、二国間で何を詰めるのか。今回の訪韓は、日本が掲げる「自由で公正」の旗の重みを映す試金石となる。声明の言葉だけでなく、実装へ踏み出す道筋を示せるかどうか。秋晴れの慶州で、その答えが形を帯びる。
