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高市早苗首相は2025年12月29日、東京・赤坂の衆院議員宿舎から、首相官邸に隣接する首相公邸へ転居した。10月21日の就任後は宿舎から官邸へ通っていたが、災害などの緊急時に初動を早める「職住近接」を優先した形だ。公邸側は夫の山本拓元衆院議員の車いす生活も踏まえ、バリアフリー対応が進められていた。
初動の「数十分」を縮めるための公邸入り
公邸の最大の意味は、官邸と同じ敷地内で暮らせる点にある。これまで首相は、議員宿舎から公用車で官邸に移動していた。共同通信などによると、12月8日の青森県の地震の際には車の手配が想定どおり進まず、官邸入りまで発生から35分かかったという。危機管理では、この「移動の摩擦」を減らす発想が前面に出た。
距離が近くても、夜間や休日は運転手や警護の合流、動線確保が必要になる。住まいが官邸の隣にあれば、連絡が入った直後に徒歩圏で指揮の場へ向かえる。一般の暮らしでいえば、救急車を待つ時間が長く感じられるのと同じで、最初の数分の遅れはその後の判断にも響きやすい。
介護と公務、年末の転居が映す現実
転居が就任直後ではなく年末になった背景には、国会審議や外交日程で時間を取りにくかった事情がある。テレビ朝日によると、首相は11月の国会で野党から早期の公邸入りを促され、荷造りの暇もないほど多忙だと説明していた。政府高官からも危機管理上、公邸に入るべきだとの声が出ており、政治日程が一段落する局面を待って実行した。
公邸は、執務の「官邸」と切り分けて総理が生活する場として位置付けられている。首相官邸ホームページによると、現在の公邸は旧官邸を改修し、2005年から公邸として使われてきた。今回は山本氏が車いすを使用しているため、居住スペースはバリアフリー化され、夫婦で入居する予定だ。危機対応と介護の両立を抱えながら、公邸を拠点に年末年始も政権運営に当たることになる。
